川合元博、書評のページ
ひとりの作家を読み始めたら、その作家の作品は読み尽くすという、「食いついたら離れない」、ブルドッグ式読書法の筆者。今のところ、文字通り、旅から旅への人生だけど、駅で、空港で、社中で、機中で、本さえあればそれで幸せな人間なのです。筆者の読書は主にミステリー、それも人間味のあふれるミステリー小説。読んでいる言葉は、第二の母国語であるドイツ語、それから時々英語。まだ日本語では翻訳の余り出ていない作家も含め、日本の皆様にヨーロッパの現代の作家をご紹介します。
Yuval Noah Harari
(イスラエル)
「サピエンス全史」。壮大な人類の歴史を、ユニークな切り口と、平易な語り口で解説、世界中でベストセラーとなった。誰にとっても「目から鱗」になること請け合いの作品である。
三国演戯を基にしたテレビシリーズ
(中国)
中国語の揚先生の一言から、三国志の登場人物に興味を持った僕。全九十五話のテレビシリーズを二か月かかって見ることに。そして、その現代性に驚きつつ、ストーリーと登場人物の虜になってしまう。
Cilla / Rolf Börjlind
(スウェーデン)
シラとロルフ、ビョリリンド夫妻は、スウェーデンのテレビ、映画の脚本家として活躍してきた。彼らは各国でヒットした「マルティン・ベック」シリーズ、「アルネ・ダール」シリーズの脚本を手掛けている。彼らが満を持して発表したオリジナル作は、女性警官の卵、オリヴィア・レニングと、元刑事トム・スティルトンを主人公にしている。シリーズは計五冊が書かれている。
Graeme Simsion
(オーストラリア)
オーストラリアの遅咲きコメディー作家の書いたベストセラー。四十歳になるまで、全てに計画を立て、その計画に従って行動してきたドン。彼は新たな計画を立てる。「結婚相手探しプロジェクト」。アンケート用紙を用意し、それによって、理想の相手を見つけようとする。果たして、これまで通り、計画通りに運ぶか・・・
Anne Mette Hancock
(デンマーク)
デンマーク発、ヨーロッパ行、若手ミステリー作家、ハンコックの作品。ジャーナリズム、法律の抜け穴、国内外の社会問題、文学まで網羅した、非常に密度の濃い作品に仕上がっている。
Emanuel Bergmann
(ドイツ)
エマヌエル・ベルクマンは一九七二年、ドイツのザールブリュッケン生まれ。大学入学資格取得後、米国のロサンゼルスに移り住み、その後、米国で暮らしている。二〇一五年に発表された処女作「トリック」は、二十世紀初頭のドイツと、二十一世紀初頭のアメリカ・ロサンゼルスという、時空間を行きつ戻りつしながら、話が進む。。
Andreas Gruber
(オーストリア)
アンドレアス・グルーバーの名前を知ったのは、二〇一八年、ドイツの書店で、ベストセラーとして山積みされていた「死の童話」の本を見た時だった。グルーバーは、オーストリア、ウィーン生まれの作家である。推理小説、ホラー、SF等、様々なジャンルに書き分けられる、多彩な才能を持った人である。
Stina Jackson
(スウェーデン)
スウェーデン、ミステリー界の新星と注目されるスティーナ・ジャクソン。スウェーデン北部のノールランド地方を舞台にした作品、「銀色の道」で、彼女は数々の賞を受けた。アメリカに渡った作者が、故郷の北スウェーデンの厳しい風土を舞台にして書いている。
Walter Isaacson
(米国)
アメリカのジャーナリスト、ウォルター・アイザクソンの書いたアルベルト・アインシュタインの伝記を読んだ。最近、もっぱら小説を読んでいたので、たまには伝記でもと思って読み始めたが、これが意外に面白く、「はまって」しまった。アインシュタインの生涯、業績、時代背景が短い単位で上手くミックスされ、専門的になり過ぎず、気軽に読めるスタイルに仕上がっている。
Tommy Jaud
(ドイツ)
最近、かなり「重い」本ばかり読んでいたので、「ワハハ」と笑える本が読みたい。そして選んだのがこの人。確かに・・・笑えた。笑いは時代と世代を超え不滅。コメディーショー脚本家から作家に転じたトミー・ヤウト。文句なし、笑わせることに徹した姿勢に脱帽する。
Dörte Hansen
(ドイツ)
ドイツのフリースランド地方出身のデルテ・ハンセンが、自分の故郷を描いた作品を書いている。フリースランドと日本の京都、場所は離れているが、彼女の作品を読んで、私はとても懐かしい気がした。一九六〇年代の社会、それが徐々に変わっていき、現在の姿になる過程を描く。人々の変化を中心に描いているのが面白い。
Anders de la Motte
(スウェーデン)
警察官と、企業のセキュリティー部門の担当という経歴を持つ作家である。過去の経験を活かし、テクノロジーを駆使した犯罪組織を描いた若者向きの作品で名を上げ、最近は深みのある作品も発表している。テンポの良さ、みなぎる緊張感で、長尺の小説を一気に読ませる。
Tove Alsterdalt
(スウェーデン)
二〇一四年、「Låt mig ta din hand(手を取って)」で、スウェーデン推理作家アカデミー賞を受賞したトーヴェ・アルステルダール。デビューの時、彼女は既に五十歳近かったが、それまでの人生経験、職業経験を生かした、傑作の数々を書いている。
John Ajvide Lindqvist
(スウェーデン)
スウェーデンのファンタジー作家、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。彼は、二〇一八年に映画化され全世界で上映された「ボーダー・二つの世界」の作者として、一躍有名になった。
Sara Lövestam
(スウェーデン)
イラン人の若者、コウプランを主人公にしたシリーズで、ベストセラー作家となったサラ・レーヴェスタム。ストックホルムに住む亡命申請中のコウプランは、金に困って私立探偵業を始める。もちろん、経験はない。不法滞在で警察からは追われる身。ゴミ捨て場から拾ってきたパソコンで、「グーグル」検索を駆使しての捜査となる。あと、当てにできるのは自分の勘と足だけ。汗と涙と苦労の物語。
Sven Weterberg
(スウェーデン)
一九九九年に、「スウェーデン推理作家アカデミー賞」を受け、その年のミステリー作家ナンバーワンになったウェステルベリ。この人も、北欧以外では殆ど知られず、作品の外国語訳も少ない。推理作家でありながら、季節の描写、自然の描写が素晴らしい。また男性でありながら、女性を主人公にして、作者が男性であることを感じさせない繊細な文章を書ける人である。
A.D. WiLK
(ドイツ)
三十代から四十代の女性の読者を対象にした、典型的「ロマンティック・コメディー」、「ラブコメ」の作家、ADヴィルク。その正統派ラブコメで、英国の「ラブコメの女王」ジョジョ・モイスを思い出してしまった。
Camilla Grebe / Åsa Träff
(スウェーデン)
カミラ・グレーベとオーサ・トレフは実の姉妹である。ふたりの共作によるサイコセラピスト(心理療法士)シリ・ベルイマンのシリーズは、スウェーデンのみならず、英国、ドイツでも人気を博している。
Malin Persson Giolito
(スウェーデン)
二〇一六年の、スウェーデン、犯罪小説作家アカデミー賞を受けたマリン・ペルソン・ギオリトは、同賞を三度受賞したリーフ・ペルソンの実の娘である。法律の専門知識を生かした法廷劇を得意としている。
Patricia Cornwell
(米国)
パトリシア・コーンウェルは、一九五六年生まれ、米国の女流犯罪小説家である。女性検屍官、ケイ・スカーペッタをヒロインにするシリーズで人気を博し、日本でもベストセラーとなった。ケイの活躍する場所は、ヴァージニア州、リッチモンド、そこはかつてコーンウェル自身が新聞記者として働いていた町でもあった。
Jan‐Guillou
(スウェーデン)
左翼的なジャーナリストとして、常に国家権力と戦っていきたギィユー。彼の作家としての位置を確固たるものにしたのが、共産主義者のスパイという変な設定のスパイ小説「赤い雄鶏」シリーズである。政治的な人だけにその作品にもその影響が・・・
Kjell‐Olof Bornemark
(スウェーデン)
遅咲きで、しかも、わずか八作しか発表せず、短期間で 作家活動を終わったボーネマルク。「スウェーデン犯罪小説作家アカデミー賞」を一九八九年に受賞している。現在のところ、英語、ドイツ語の翻訳が出ているのは、一作のみである。
Jean Bolinder
(スウェーデン)
一九七〇年代から活躍し、スウェーデン・ミステリー大賞を二度受賞したジーン・ボリンダー。会話の多い文体、流麗な会話、このような作品を書ける人には共通点がある。劇作家、演出家の素養のある人である。ボリンダーも作家であると同時に、劇作家であり、演出家であった。
Ulf Durling
(スウェーデン)
スウェーデン・ミステリー大賞を受賞した作家を読破するというプロジェクトの一環として、ドゥルリングの「古いチーズ」を読んだ。一九七一年の作品であり、ドゥルリングの推理小説としてのデビュー作である。彼の本業は医者であった。精神科医として活躍し、後年は病院長も歴任している。この作品の中でも、医学、薬学に関する知識が活用されている。
Jussi Adler Olsen
(デンマーク)
二〇一〇年代、ドイツで、ベストセラーを連発している作家、ユッシ・アドラー・オルセン。特に人気のある「特別捜査班Q、カール・メルク」シリーズを読んだ。ベストセラー作家の人気に迫る。
スウェーデンの有名な輸出品は何でしょう?イケアの家具、ボルボやサーブの車、木材・・・忘れてならないのはミステリー小説。スウェーデンは、全世界で読まれるミステリーの重要な供給元なのです。自称、「スウェーデン犯罪小説に関する日本人オーソリティー」である私が、その作家、作品の魅力、背景を紹介します。スウェーデンには「推理作家アカデミー」という組織があり、毎年、最優秀賞を選んでいます。その歴代の受賞者を順番にカバーし、次に、賞は取っていないけれど、重要な作家とその作品を紹介します。
Gard Sveen
(ノルウェー)
ガルド・スヴェーンは、一九六九年生まれ、作家としての活動と共に、ノルウェー国防相のアドバイザーもしている。二〇一三年に発表された「最後の巡礼者」は、スヴェーンの、刑事トミー・ベルクマンを主人公にしたシリーズの第一作である。ベストセラーとなり、同じ年のノルウェー・ミステリー大賞に輝いた。また、翌年、北欧の犯罪小説の最高の栄誉である「ガラスの鍵賞」も受賞している。彼は、「ヨー・ネスベーの後継者」とも呼ばれている。
Elena Ferrante
(イタリア)
イタリア人の女性作家、エレナ・フェランテはペンネームで、彼女の正体は一切明らかにされていない。唯一分かっていることは、一九四三年にナポリで生まれたこと。自分の少女時代の背景を使って、エレナとリラを主人公にし、ナポリを舞台にした四部作を書いている。エレナ・フェランテにとっては、自分の素性、正体を現さないことが、執筆の大前提であるとのことだ。
「本というものは、ひとたび書かれたら、作者の必要など無いのです。」
と彼女は述べている。
Aino Trosell
(スウェーデン)
アイノ・トロセルは一九四九年、スウェーデン生まれの女性作家である。一九七八年に最初の作品を発表している。従って、彼女は作家としての活動歴が四十年近い。最初の二十年は一貫して社会的な小説を書いていた。二〇〇〇年近くになり、彼女は初めて犯罪小説を手掛ける。そして、第一作が二〇〇〇年のスウェーデン犯罪小説大賞を受賞た。
Kerstin Ekman
(スウェーデン)
スウェーデン、ウプサラ出身のシャスティン・エークマンは一九三三年生まれ、今年で八十四歳。アガサ・クリスティーとまではいかないが、かなり古い世代に属する人である。彼女は一九九三年にスウェーデン・ミステリー大賞を受賞しており、それで名前を知った。推理小説のみならず、十九世紀から二十世紀に至る北スウェーデンの人々、風物を描く作品を書いている。数世代に渡る女性を主人公にした作品が多い。
Lars Kepler
(スウェーデン)
作家「ラース・ケプラー」、最初ペンネームのみが公表されたので、衝撃的な内容の作品を書いたのは誰か、憶測が飛んだ。純文学作家の夫婦、アレクサンドラ・アーンドリルとアレキサンダー・アーンドリルの共作であることが後に明らかになった。「キレがあるのにコクがある」という作品群を発表している。
Ann Baiano
(ドイツ)
アン・バイアーノの作品は、風光明媚で歴史に満ちたイタリアのシチリア島を舞台にしている。著者の名前から、イタリア語の作品のドイツ語訳だと最初思ったが、著者はドイツ人で、最初からドイツ語で書かれていた。シチリア島西部の、歴史、地理、文化、住民を知る上での良い勉強材料にもなる。
Christoffer
Carlsson
(スウェーデン)
クリストファー・カールソンは二〇一三年、十九歳で、スウェーデン推理作家アカデミー賞を受賞した。もちろん、最年少の受賞である。しかし、十九歳の人間がこの小説を書けたという事実は、驚嘆に値する。
Hanni Münzer
(ドイツ)
ハニ・ミュンツァーは一九五六年生まれのドイツ人、「ベレストリスティック」、「娯楽小説、大衆小説」の作家として位置付けられている。ものすごく深刻なテーマを扱う、時間的にも空間的にも壮大な物語を書くが、毎週主人公が窮地に陥るところで「続く」となる、テレビの連続ドラマ、ソープオペラを見ているような印象を受ける。
Christina Berndt
(ドイツ)
医事評論家、ジャーナリストとして活躍するクリスティナ・ベルント。幸福を追い求めるよりも、満足を追い求めよ。幸福は一過性のものであるが、満足は持続する。そして満足は自分の心の中の基準を変えることにより、誰もが得ることができる・・・満足を再認識し、それを得るためのノウハウを書いた。
Kjell Eriksson
(スウェーデン)
スウェーデンで、その年のミステリーのナンバーワンを決める、「スウェーデン犯罪小説アカデミー賞」を二〇〇二年に受賞しているエリクソン。小都市ウプサラを舞台にしている。リアリティーをとことん追求した、ちょっと地味な作風である。
Rodica Doehnert
(ドイツ)
「ザッハー家の人々」の作者のロディカ・デーネルトは、小説家というより脚本家である。この物語は、二〇一六年に、ドイツのテレビ局ZDFとオーストリアのテレビ局ORFが共同で制作したドラマの原作である。ドラマも見たが、「原作に忠実」と言うよりも、そもそもドラマ化を念頭に置いて原作が作られているので、小説とテレビドラマから、全く同じ印象を受けた。
Arne Dahl
(スウェーデン)
ヤン・アーナルドは、一九六三年生まれ、文芸評論家でもあり、ノーベル文学賞選考委員会の一員も務めている。彼は、一九九八年より、アルネ・ダールトいうペンネームで、犯罪小説のシリーズを刊行している。彼は「Aグループ」、スウェーデン警察の特殊捜査班を主人公にしたシリーズを二〇一五年まで、十一作発表。二〇一六年に、サム・ベリアーとモリー・ブロムが主人公となる新しいシリーズを発表した。
Jojo Moyes
(英国)
何故この人の本を買ったのか、全然思い出せない。他の本の下から現れた。ジョジョ・モイス。耳慣れない名前から、ブラジルかどこかの人かと思ったら、何と英国人の女性だった。読んでみると「ロマンティック・コメディー」、日本で言う「ラブコメ」。ま、たまにはいいか。
Michael Hjorth/Hans Rosenfeldt
(スウェーデン)
犯罪小説の世界では、常に新しい試みがなされているが、その中でも、このスウェーデンの二人組の作品からは、新しさを感じる。特に捜査をする側の人間関係設定、愛憎の描写が秀逸である。
Anne Holt
(ノルウェー)
アンネ・ホルトは一九五八年生まれ、弁護士、ジャーナリストと活躍した人物で、何とノルウェーの法務大臣まで歴任している。主人公のハンネ・ヴィルヘルムソンはレズビアンであり、ホルト自身も同性愛者である。アガサ・クリスティーの流れを汲んで、設定と謎解きに徹した作品を書く。
Peter Høug
(デンマーク)
多作ではないが、数少ない作品で、北欧犯罪小説大賞を受賞し、デンマークの代表的なミステリー作家となったペーター・ホゥ。スウェーデンやノルウェーとはまた違った、デンマークの小説のエッセンスを感じられることを期待しつつ、彼の作品を読み始めた。
Thomas Enger
(ノルウェー)
ノルウェーの犯罪小説と言えば、ヨー・ネスベーが抜き出ていたが、それを追う才能として、頭角を現しているのがトーマス・エンガー。ジャーナリスト、ヘニング・ユールを主人公にしたシリーズである。
Leif GW Persson
(スウェーデン)
スウェーデン国内では犯罪小説の第一人者であるが、国外では殆ど知られていないぺルソン。彼は大学で犯罪学を教え、警察の顧問でもある。彼が外国で不人気である理由と、国内での人気の秘密を探る。
Johan Theorin
(スウェーデン)
スウェーデンの若手ミステリー作家のホープとして期待されるヨハン・テオリン。バルト海に浮かぶエーランド島を舞台に、時を超えたストーリーが展開される。
Kristina Ohlsson
(スウェーデン)
良く練られたプロット、詳細に描きこまれた登場人物、微妙な心の襞の描写、どれをとっても一級品のミステリーである。読むのがためらわれるほど長いが、長さを感じさせない。ストックホルム警察のベテラン警視アレック・レヒトと、若い女性犯罪心理学者フレドリカ・ベルイマンのコンビが難事件に挑む。
Mari Jungstedt
(スウェーデン)
スウェーデンの犯罪小説作家として、ユングステッドの評価は高い。バルト海に浮かぶゴットランド島、極めて閉じられた社会、いわば密室の中での、巧みな演出が光る作品群。
Åke Edwardson
(スウェーデン)
オーケ・エドヴァードソンは一九五三年生まれ、既に十二作の「警視ヴィンター」シリーズを発表し、三度に渡り「スウェーデン推理小説大賞」に輝いている。その割に、国外では知名度がイマイチな作家である。流れるような会話の表現が特徴、会話を文字にする名手である。
Camilla
Läckberg
(スウェーデン)
スウェーデンのアガサ・クリスティーと呼ばれる、カミラ・レックバリ。舞台はスウェーデン西部の小さな海辺の町フィエルバッカ、レックバリ自身が生まれた場所でもある。地元警察の若手警察官パトリック・ヘドストレームと作家のエリカ・ファルクが難事件に挑む。
Arnaldur Indridason
(アイスランド)
アイスランド人に苗字はない。姓の代わりに父親の名前に男性は「ソン」、女性は「ドティル」を付ける。アーナルデュル・インドリダソン、一度聞いただけで言えた人は偉い。従って、彼の父は「インドリディ」ということになる。レイキャビクを舞台にした、エーレンデュル警部シリーズ。
Karin Fossum
(ノルウェー)
カリン・フォッスムは1954年生まれのノルウェーの女性作家である。彼女は詩人として何冊かの詩集を出した後、1995年に犯罪小説の執筆を始めた。ノルウェーのこれと言って特徴のない地方都市を舞台に、陰鬱な雰囲気の中で、ストーリーが展開される。彼女は、BBCの「北欧の犯罪小説」の特集番組の中で、現代ノルウェーを代表するミステリー作家として紹介されている。
Barry Forshaw
(英国)
バリー・フォーショーは、英国の作家であるが、犯罪小説と映画の研究家としても知られている。二〇一一年、BBCで「ノルディック・ノワール」というタイトルで北欧のミステリーの特集番組が企画されたとき、その進行役を勤めた。彼は実際に多くの北欧の作家と会って話をしており、その評論には説得力がある。
Georges Simenon
(ベルギー)
ジョルジュ・シムノンはベルギー生まれの、フランス語で執筆した作家である。「メグレ警視」シリーズの著者であり、パリ警察の警視、ジュール・メグレを主人公にした小説だけで、長編、中編、短編取り混ぜて七十編以上書いている。シリーズ最初の作品が一九二九年であり、最後の作品が発表されたのが一九七二年となっている。何と、全七十五話、四十三年間の長きに渡り、シリーズは刊行されていたのである。信じられない息の長さである。
Hans Rath
(ドイツ)
ハンス・ラートは、一九六五年生まれ。ボンで哲学、ドイツ文学、心理学を勉強している。確かに、彼の本は、哲学、心理学の知識がなければ書けないものだ。その後、ベルリンで作家活動と開始。シナリオも多数書いている。コミカルで軽快なストーリーを通じて、人間の存在の意味について考えさせられる。
Ferdinand von Schirach
(ドイツ)
シーラッハは、一九六四年、ミュンヘン生まれの弁護士である。彼はいくつかのドイツの歴史に残る裁判の弁護団に加わっている。つまり、弁護士としても一流の人物。弁護士としての活動と並行して、二〇〇九年、四十五歳にして初めて小説を発表した。二〇一一年に発表されたこの「コリーニ事件」は、ベストセラーとなり、彼の作家としての地位を固めた。
.
Kerstin Gier
(ドイツ)
ケルスティン・ギアは一九六六年生まれ。三十歳のときに書いたMänner und andere
Katastrophenがベストセラーとなった。これまでの出版が百万部を超えるベストセラー作家である。笑って、泣いて、ホロッとさせられる。「ラブコメ」の女王というところか。
Jens Lapidus
(スウェーデン)
イェンス・ラピドゥスは、一九七四年生まれ、刑事事件を担当する弁護士を本業としている。彼は二〇一四年現在、本業の傍ら、三冊の犯罪小説を発表している。スティーグ・ラーソンは死亡しているし、ヘニング・マンケルも最近は犯罪小説以外のジャンルの小説に変化してきている。そんな中、ラピドゥスは、新しい時代のスカンジナビア犯罪小説の若い旗手として、注目されている作家である。
Tom König
(ドイツ)
現代の消費者が、金儲けのことしか頭にない企業によって、どんな目に遭わされているか、恨み辛みの数々をコラムに書いてきたトム・ケーニヒ。この本はその集大成である。日本では「お客様は神様」だが、ヨーロッパでは「お客様は王様」。「王様」はドイツ語では「ケーニヒ」である。本来なら「王様」であるべき人間が語る、ドイツでの「サービス」の実態。
Ralf Husmann
(ドイツ)
コメディアン出身で、喜劇作家のフスマンの描く世界。漫才を聞いているように、必ず三十秒に一度は「くすぐり」がある。無条件で楽しめる。古典的な喜劇の「お約束事」もきちんと踏襲している。
田中克彦著
(日本)
岩波新書から出た言語学の入門書である。今から二十年以上前の出版。九月から、「外国人のための日本語教師」の資格を取るためにカレッジに通うことになっている。そのカレッジの指定書籍になっていたので、半ば強制的に買わされて読んだ。(久々に日本語を読んだって感じ。)例によって、読みながらメモを取ったので、ここに紹介することにする。言語学の歴史を概観する上で、なかなか役に立った。
Eva Gabrielson
(スウェーデン)
「スティーグと私」は、スティーグ・ラーソンのパートナーで、三十二年間彼と一緒に暮らした女性、エヴァ・ガブリエルソンの書いた回顧録である。「ミレニアム三部作」でベストセラー作家となったとき、ラーソンはもうこの世にはいなかった。従って、彼女の書いた本は、ラーソンの人生と、彼の作品が作られた背景を知る上で、貴重な資料であると言える。
Helene Tursten
(スウェーデン)
今流行の、女性作家が描く女性を主人公にした推理小説である。ヘレネ・トゥルステンはスウェーデンのイェーテボリ在住、作家になる前は、看護婦と歯科医をやっていたという。主人公の女性刑事イレーネ・フスは、柔術のヨーロッパ選手権で優勝経験があるという設定になっている。
(デンマーク国営放送のテレビシリーズ)
「Forbrydelsen」はデンマーク国営放送が二〇〇七年から製作した犯罪ドラマである。主人公はソフィー・グロベール演じるコペンハーゲン警察の女性警視のサラ・ルンド。このシリーズと彼女は、ドイツ、英国等でも大きな人気を博した。英国ではルンドの着ている手編みのセーターが、女性の間で流行するほどの社会現象となった。
Manfred Mai
(ドイツ)
マンフレット・マイはドイツの児童文学家である。彼はれ、若い人々が気軽に、気軽に読めるようなドイツの歴史、ドイツの文学史の本を執筆している。お話を読むように楽しく歴史の勉強ができる。
Nordic Noir, The Story of Scandinavian Crime Fiction
BBC Four, Time Shift, 21:00-22:00, 21 August 2011
欧米で人気を博すスカンジナビアの推理小説、その秘密に迫ったBBCの番組の要約。ともかく、広くて寒くて人がいないので、殺した死体を隠すのに、スカンジナビアは絶好の場所かも。
Swedish Criminal Fiction, Novel, Film, Television
Steven Peacock、Manchester
University Press 2014(英国)
スウェーデンの推理小説について強い興味を持っている私が、小説以外に最初に読んだ本である。ここ五年ほどの間に、北欧からの推理小説(Criminal Fictionなので厳密に言うと犯罪小説なのだが)とそれを原作にした映画、テレビドラマが英国において大きな人気を博している。その秘密を解き明かそうとしたのが、この本である。
Stephen Hawking
(英国)
スティーブン・ホーキング博士は、ご存知のように、ケンブリッジ大学院時代、難病に取りつかれ、数年後の死を宣告された。その後、重度の身体障碍者となりながらも、生き永らえ研究を続け、ブラックホールの理論により一躍有名になった。通常、良い研究者は良い教育者であるとは限らないが、これほど分かり易い文章を書ける彼は、研究者と教育者の両方の資質を備えた、数少ない人物だと思う。
Jonas Jonasson
(スウェーデン)
半世紀の時を越え、地球規模に渡る、壮大な、それでいて馬鹿馬鹿しい物語を発表し続けるヨナス・ヨナソン。一九六一年にヴェクスユで生まれ、イェーテボリ大学で学んだ後、ジャーナリストとして活躍したヨナソン。しかし、健康を害してしまう。それが転機となり、田舎に移り住んだ彼は、小説の執筆を始める。二〇〇九年に発表された処女作「窓から逃げた100歳老人」はベストセラーとなり、三十ヶ国語に翻訳され、二〇一四年に映画も公開された。
Sebastian Fitzek
(ドイツ)
ドイツの誇る、サイコスリラーの旗手である、セバスティアン・フィツェック。人間の深層心理を巧みに突きながら、読み手をグイグイと引っ張っていく。
Carlos Luiz Zafon
(スペイン)
「風の影」はスペインの作家、カルロス・ルイズ・ザフォンが二〇〇一年に発表した小説。バルセロナに住む青年ダニエル・センペレを巡るストーリーと、彼が読んだ小説「風の影」の著者、フリアン・カラクスを巡るストーリーが並行して進む。そして、二十年の時間差のあるふたつのストーリーが最後に一体となる。ザフォンの最大のベストセラーとなった一冊である。
Ursula Poznanski
(オーストリア)
オーストリアの女性作家、ウルズラ・ポツナンスキーの描く、女性刑事ベアトリス・カスパリのシリーズ。風光明媚なザルツブルク、ベアトリスは夫と別れ、二人の小さな子供を抱えながら、捜査班で働いている。
Rafik Schami
(シリア/ドイツ)
「書道家の秘密」は、シリア出身でドイツの作家、ラフィク・シャミの描く、一九五〇年代のシリアのダマスカスを舞台にした物語。書道家の若くて美しい妻が失踪した事件から物語は始まる。しかし、そこに至るまでには、十年以上の伏線があった。それが順に語られる。回教国の文化と、アラビア語の歴史を知る上でも、好都合な本である。
Viktor E. Frankl
(オーストリア)
アウシュビッツの強制収容所で過ごした経験を持つ、オーストリア人の精神科医。彼は壮絶な経験を冷静に記述し、後年の成果につなげた。
Jean-Luc Bannalec
(ドイツ)
フランス、ブルターニュ地方の美しい自然と、夏の風物詩を背景にした、殺人事件の物語。パリから左遷させられてこの地へ来た警視ジョルジュ・デュパンがその謎を解く。作者のバナレクの父親はブルターニュの出身で母親はドイツ人。ブルターニュの気質、風物、歴史が、平易なドイツ語で織り込まれていて、読み易い。
Luca Di Fulvio
(イタリア)
イタリアの作家、ディ・フルヴィオ、彼の代表作。移民街に住む、貧しいイタリア移民の少年が、自分の特技とする「本当のような嘘の話」によって、成功していくという話。読んでいて気持ちの良い、読後感もすっきりする、「爽やかな」小説である。一九二〇年代のニューヨークを舞台にしている。
John Berendt
(米国)
「墜落した天使の街」は米国のノンフィクション作家ジョン・ベレンドの、二〇〇五年に発刊された二冊目の本である。ヴェニスの人間模様、気質、伝統を、ラ・フェニーチェ劇場の火事と絡めて語っている。話は一九九六年の劇場焼失の日に始まり、二〇〇三年の再開場の日で終わる。その八年の間に、この話の主人公の一人とも言える、ガラス細工の名人、アルキメデ・セグーソは劇場の再興を見ることなく亡くなっていた。
Sarah Lark
(ドイツ)
ザラ・ラークは1958年生まれ、ニュージーランドに魅せられ、ニュージーランドを舞台にした小説を発表しているドイツの女流作家である。若い頃は、旅行会社の添乗員をしていたという。
Inger Frimansson
(スウェーデン)
インゲル・フリマンソンは、一九四四年、スウェーデンはバルト海に浮かぶゴットランドの生まれの女性。三十年間ジャーナリストとして働いた後、ミステリーを書き始めたというから、かなり遅咲きの人である。一九九二年より小説に転じ、一九九八年に発表された「おやすみ、愛しい人」(God natt min älskade)はその年のスウェーデン推理小説賞を受賞した。ドイツ語では十冊以上の翻訳が出ているが、英語での翻訳はわずかに三冊。英語圏ではまだまだマイナーは人である。
Åsa
Larsson
(スウェーデン)
スウェーデン人のラーソンと言っても、「ドラゴン・タトゥーの女」のスティーグ・ラーソンではなく、女性作家のオーサ・ラーソンである。一九六六年生まれのラーソンは、シリーズの主人公レベッカ・マルティンソンと同じく、税金対策の弁護士をしていたという。女性作家ということで、物語で活躍する人物は徹底して女性、
「この人、男性は嫌いなの、男性に恨みがあるの?」
と問いたくなるくらい。
Christian Schünemann
(ドイツ)
美容師が事件を解決するというシリーズ。美容師と言っても、主人公のトマス・プリンツはそんじょそこらの美容院で、近所のおばさん連中の髪を切っているわけではない。ロンドンはヴィダル・サッスーン仕込み、ミュンヘンでも有数の高級美容サロンで、上流階級の女性を相手にしている。そんな彼が何故か難事件と出会い、それを解決していく。
Liza Marklund
(スウェーデン)
リザ・マークルンドは、一九六二年生まれ、スウェーデンのジャーナリストであり作家である。彼女はコラムの執筆活動、ユニセフの大使などの多忙な仕事を抱えながら、八冊のアニカ・ベングツソン・シリーズを発表している。主人公のアニカは、小さな息子と娘を抱えた、大衆紙の新聞記者。作者と同じく、多忙な生活を送っているという設定になっている。
Khaled Hosseini
(アフガニスタン/米国)
カレド・ホセイニは1965年アフガニスタンに生まれる。外交官であった彼の父は、パリに滞在中、革命によりアフガニスタンに戻ることができず、1980年に、家族を連れて米国に亡命する。ホセイニは15歳で米国に渡り、そこで市民権をとり医者、作家としての活動を開始した。彼の第一作「凧を追う人」は米国でベストセラーとなる。西洋人にはほとんど知られていないアフガニスタンの伝統、文化、歴史を欧米の人々に伝えた彼の功績は大きい。
Osman Engin
(トルコ/ドイツ)
「千夜一夜勤物語」の作者のオスマン・エンギンは、一九六〇年トルコ生まれ、一九七三年、十三歳のときにドイツ移住ということなので、おそらく、出稼ぎの両親に連れられてドイツ
にやってきたのであろう。彼は、テレビラジオなどで、風刺に満ちた作品を発表している。この物語は、「アラビアンナイト・千夜一夜物語」のパロディー。解雇されかかったトルコ人労働者が、仕事の後、現場監督に毎日面白い話を聞かせることにより、「クビ」を免れようと試みる話である。果たして、シェーラザー
ドのように、試みは上手くいくのだろうか。
Ian Rankin
(英国)
スコットランドのエジンバラを舞台にした、警察小説。主人公は、不思議な過去を持つ刑事、ジョン・リーバス。スコットランドの風景と気質が作品の基調となっている。
Honoré de Balzac
(フランス)
フランスの文豪による「人間喜劇」の名作「谷間の百合」、これも十代で読んでその後の人生に影響を与えた本。「青春時代の懐かしの名作」シリーズ、第二弾。
Ernest Hemingway
(米国)
「陽はまた昇る」、若い頃読んで感動した作品を今読んでみたらどう感じるか、また日本語で読んで面白かった本をドイツ語で読んだらどうなるか、そんな実験をしてみた。「青春時代の懐かしの名作」シリーズ、第一弾。
Andrea Maria Schenkel
(ドイツ)
一九六二年、レーゲンスブルク生まれのアンドレア・マリア・シェンケルが二〇〇六年に発表した「タンネート、凍える森」は彼女の第一作である。二〇〇七年にはドイツ国内で数々の賞を取り、ドイツのベストセラーのトップに躍り出た本。百七十ページと短い。人々により語られる「証言」により、物語が構成されている。
Colin Cotterill
(英国)
作者のコテリルはユネスコの職員として、永年に渡りラオス、その他アジアの国々で働いていた。一九七六年、共産党が全国を掌握した直後のラオス、そんなまったく馴染みのないシチュエーション。当時はどんな様子で、どのように物語が展開するのか興味深い。
Stieg Larsson
(スウェーデン)
スウェーデンのジャーナリストで作家。ジャーナリストのミカエル・ブロムクヴィストと刺青の女、リザベト・サランダーを主人公にした三部作を執筆。その出版前に心臓発作で他界した。死後発売された本は、スウェーデンのみならず、全世界でベストセラーとなり、映画化もされた。
Paulo Coelho
(ブラジル)
1988年に書かれた「錬金術師」がベストセラーとなる。「錬金術師」、童話とか寓話と考えるには余りにも大規模で、奥が深い。物語の展開も、登場人物も現実離れしているのだが、それでいて妙に生々しい印象を受ける。また、その登場人物の語る言葉も、非常に考えさせられるものがある。なかなか面白く、しかも「人生いかに生きるべきか」の勉強になる小説であった。
Jostein Gaarder
(ノルウェー)
「ソフィーの世界」:ノルウェーの作家、哲学者、ヨスタイン・ゴルデルの作品。この本を読むと、人類の歴史の中に占める哲学の流れが良く分かる。ストーリーも面白いが、西洋哲学の入門書としても最高。
Thomas Kanger
(スウェーデン)
1951年スウェーデンのウプサラ生まれ。ジャーナリストであり小説家。自らの育ったヴェステロス市の警察を舞台にし、女性刑事エリナ・ヴィークが主人公の一連のシリーズを発表している。
Wolfram Fleischhauer
(ドイツ)
ドイツの作家。1961年生まれ。ドイツ、フランス、スペインの大学で文学を専攻。米国カリフォルニアのアーヴィーン大学に留学後、同時通訳として働く。二〇〇〇年以降、作家としても活動。
Frank Schätzing
(ドイツ)
2004年に刊行された長大な海洋SF小説「群れ」(日本語題:「深海のYrr」)がベストセラーとなる。
Audrey Niffenegger
(米国)
ベストセラーとなり、映画かもされた「タイムトラベラーの妻」の作者。ラブロマンスとSFの組み合わせが絶妙である。
Orhan Pamuk
(トルコ)
トルコ唯一のノーベル賞受賞者。イスラム教をベースにしながら、西洋文明のあり方も考えさせる作品を書いている。
Daniel Glattauer
(オーストリア)
1960年生まれのオーストリアの作家。見知らぬ男女間で交わされるEメールの遣り取りという、新しい書簡体の小説は着想が面白いだけでなく、奥も深い。
Jo Nesbø
(ノルウェー)
オスロ警察の「はみだし刑事」ハリー・ホーレの活躍するシリーズ。ノルウェーという辺境の地への興味と、ハリーの度を越えたはみだし方で読ませる。
Siegfried Lenz
(ドイツ)
1926年、東プロイセン、リュック生まれ。平易な文章、ユーモアに富み、押し付けがましさのない作品には好感が持てる。筆者が大学の卒業論文のテーマに選んだ作家でもある。
Håkan Nesser
(スウェーデン)
ホーカン・ネッセルは一九五八年生まれ、スウェーデンの作家である。彼は、警視ファン・フェーテレン・シリーズを中心に、多くのミステリーを発表している。スウェーデンの小説は余り民族的な匂いがなく、中立的で万人に対して読みやすい。しかし、ネッセルの小説はそれが更に徹底されている。出てくる土地の名前は全て架空のもので、どこの国かを特定することさえできなないのだ。それでいてリアリティーがある。不思議な作風である。
Anders Roslund
& Börge Hellström
(スウェーデン)
スウェーデンの二人組による、ストックホルム警察警視、エヴェルト・グレンスを主人公にした社会派のミステリー。登場人物がそれぞれ皆過去を背負って生きている。透明感のある文章。スウェーデンという土地柄か、民族色が薄く万人に読みやすい。マルティン・ベック、クルト・ヴァランダーというスウェーデン警察小説の系譜もきっちりと受け継いでいる。
(1937年−、ギリシア)
Petros Markaris
作者のマルカリスは、一九三七年元旦、トルコ、イスタンブール生まれ。母親がギリシア人、長くトルコ国籍を持っていたという。オーストリア人の学校に通っており、ドイツ、オーストリアで学んだ経験もあり、ギリシア語、トルコ語、ドイツ語を話し、現在はアテネに在住とのこと。
Silvio Toddi
シルヴィオ・トッディは名前の如くイタリア人である。読み終わって、作者についてインタネットの検索エンジンで調べてみる。出てくるのはドイツ語のサイトのみ。しかも、この「ヴェニスまでの往復切符」に纏わる記事のみ。トッディって、本国のイタリアでは読まれてないの。この本しか書いてないの。そんな疑問が湧き上がる。
Fred Uhlman
画家として有名なウールマンの、数少ない文筆作品。輝きのある作品。
Jan Seghers
フランクフルトの街で活動する警視ロベルト・マルターラーのシリーズ。
Uwe Timm
1940年ハンブルクに生まれる。父が毛皮職人であった関係で、毛皮職人の修行をし、その資格を取る。しかし、1963年に大学入学資格を取り、ミュンヘンとパリで哲学とドイツ文学を専攻。彼の作品は1971年より次第に出版され、数々の賞を受ける。空襲で瓦礫のなったハンブルクと、その中で生きる人々を描く。
「なんでシェークスピアをドイツ語で読むねん?」
「すねてんのちゃう?」
「ええ格好せんときよし。」
「アホちゃうか?」
いやいや、それには訳が。今年、2006年は、シェークスピアに挑戦することを目標とし、一応、英語の原文で読もうと最初努力してはみたのです。しかし、私の英語力ではとても原文には歯が立たない。そんなとき、ドイツ、レクラム文庫の、左側が英語、右側がドイツ語という結構な版が手に入ったのです。読み始めると、ドイツ語訳ばかり読んでしまい、結果的にはドイツ語で読むことになった次第。
ドイツでもシェークスピアは、後世の作家のバックボーンのひとつに数えられている由。数々の名文句もドイツ語で言ったらどうなるのか、そのあたりにも興味があるし。まあともかく、読み始めてみましょう。
J. K. Rowling
これまで、書評こそ書かなかったが、「ハリー・ポッター」シリーズは、本も全部読み、映画も全作見ていた。うちの子供たちの影響が大きいのであるが。正直言って、最近のものは長い。英語で六百ページ。子供向けの本でこの長さ。最新刊は読むのに一ヶ月以上かかった。これを発売された当日、一日で読んでしまった子供がいるという。ネイティヴ・スピーカーはやはり違う。
Agatha Christie
今更クリスティーでもあるまいという気もする。既に読み尽くされ、語り尽くされた作家であることは間違いない。アガサ・クリスティーは、私にとって英語の師である。十数年前、英国に移って来たとき、まず英語に慣れなくてはいけないと思い、クリスティーを読みまくった。慣れない英語で、ある程度のスピードを維持して読むのに、クリスティーの小説は最適だった。特にエルキュール・ポアロのシリーズには完全に「はまって」しまって、殆ど全部読んでしまった。一九二〇年代、三十年代の、いささか古風な英語ながら、私は多くの単語と、言い回しを、クリスティーの作品から学んだ。あれから十年余。久しぶりにクリスティーを読み直してみた。改めて、その面白さを認識した。物語に現実性を持たせるために、その時々の社会現象を取り入れるミステリーが多い中で、そんなことは一切お構いなし、時代、世相を超越したクリスティーが新鮮である。
Martin Suter
はっきり言って、着想も面白いし、ストーリーテリングも秀逸。特に「リラ・リラ」と「スモール・ワールド」は筆者が読んだ中でも、五本の指に入る小説。
Dick Francis
ディック・フランシスが面白いという情報を、ドイツに住むミステリー好きの友人から聞いた。フランシスは元ジョッキーで、競馬界を舞台にした小説を書いているという。先ず一冊読んでみた。面白かった。テンポ、ユーモア、トリック、ロマンス、活劇、どれをとっても一級品である。そのバランスも絶妙である。果たして、私は、いつものようにこの作家の作品を、読破することになるのであろうか。三十冊以上とは、かなり手強い相手である。
Per Wahlöö、Maj Sjöwall
スウェーデンの誇る古典的推理小説、「マルティン・ベック」シリーズを書いたおしどり作家。1960年代に書かれた作品ながら、少しも古さを感じさせない。ヘニング・マンケルへの影響も感じることができ、それも興味深い。
Dan Brown
ミリオンセラーとなった「ダ・ヴィンチ・コード」の作者。博学。読んでいるだけで、雑学が身につきます。
Hans Werner Kettenbach
ミステリーから恋愛小説まで間口が広い作家。小説だけでなく、テレビ、映画、ラジオの脚本も多く手がける。
Henning Mankell
スウェーデンの南の端、イスタドを舞台した、「警視クルト・ヴァランダー」シリーズ。その時々の社会問題を巧みに作品に織り込んでいる。
Helen Fielding
独身女性のバイブルとも言える、「ブリジット・ジョーンズの日記」の作者。
Magdalen Nabb
フィレンツェを舞台にした「警部サルバドーレ・ガルナシア」シリーズ。風采は上がらないが、人間味あふれるガルナシアが魅力。
Donna Leon
ヴェニスを舞台にした「警視ブルネッティ」シリーズ。ブルネッティが汚職と腐敗に満ちた社会と必死に戦う姿には、誰もが共感を覚える。
Patrick Süskind
「香水・ある殺人者の物語」が時代を超えたベストセラーとなる。マスコミ嫌いで有名。「香水」のようにおどろおどろしい小説から、軽い小説まで書き分けの才能は素晴らしい。
Bernhald Schlink
「翻訳者」が世界的ベストセラーとなる。大学で法学部の教授でもある。笑える推理小説「探偵ゼルプ」シリーズなど、ナチス・ドイツ時代について独特の見解を示す。