クルト・ヴァランダー、直感と粘りの美学
ドイツに住んでおられる本好きの女性からお便りをいただき、マンケルが面白いとお聞きした。The Lord of the Ringsの第一巻を、苦手の英語で、一ヶ月以上費やして、実際「もういい加減に堪忍して」と思いつつ、何とか読み終えた私は、その頃、サクサク読めて歯切れの良い本に飢えていた。早速、インターネットのドイツ「アマゾン」で、そのドイツ在住の女性が面白いと薦めてくださったマンケルの本を、四冊注文した。そのときは、不勉強にも、マンケルがまだドイツの作家だと思っていた。本が到着し、中を開けてみて初めて、マンケルがスウェーデン人であり、原作がスウェーデン語であることに気がついた次第である。
主人公は、クルト・ヴァランダー(Kurt Wallander)である。彼はイスタドというスウェーデンの小さな海辺の町の警察に勤めている。警視であり、警察では署長に次いで二番目の地位である。年齢は、この物語の中では四十二歳。
ヴァレンダーの捜査術は、かなり直感によるところが多い。「何かがおかしい」とふと感じたところに、執拗にかじりついていく。その直感とねばりには、誰もが一目置いている。しかし、ヴァランダーは論理の人ではない。また、主人公はスーパーマンでもない。公私ともに悩みをかかえた一人の中年男なのである。
Daisy Sisters 1982年
ドイツ語題 Mӧrder ohne Geshicht 原題 Mӧrdare utan ansikte 1991年
ドイツ語題 Hunde von Riga 原題 Hundarna I Riga 1992年
ドイツ語題: Die weiße Löwin 原題:Den vita lejoninnan 1993年
ドイツ語題:Der Mann, der lächelte 原題:Mannen som log 1994年
ドイツ語題 Die falsche Fährte 原題 Villospår 1995年
ドイツ語題:Die fünfte Frau 原題:Den femte kvinnan 1996年
ドイツ語題: Mittsommermord 原題: Steget efter 1997年
ドイツ語題: Die Brandmauer
原題: Brandvägg 1998年
ドイツ語題: Wallanders erster Fall 原題: Pyramiden 1999年
ドイツ語題: Die Rückkehr des Tanzlehrers 原題: Danslärarens återkomst 2000年
ドイツ語題: Vor dem Frost
原題: Innan frosten 2002年
ドイツ訳題:Kennedys Hirn 原題:Kennedys hjärne 2005年
ドイツ訳題:Tiefe 原題:Djup 2004年
ドイツ語題:Die italienischen Schuhe 原題:Italienska skor
2006年
ドイツ語題:「Der Chinese」原題:「Kinesen」2008年
ドイツ語題:「Der Feind im Schatten」(陰にいる敵)原題:「Den orolige Mannen」(不安に駆られた男)(2009年)
ドイツ語題:Das Auge des Leoparden 原題:Leopardens öga(2004年)
ドイツ語題:Erinnerung an einen
schmutzigen Engel 原題:Minnet av
en Smutsig Ängel (2011年)
ドイツ語題:Mord im Herbst、 原題(オランダ語):Handen、スウェーデン語:Het Graf(2004年/2013年)
ドイツ語題:Der Chronsit der Winde (風の語り部)、原題:Comédia infantile (子供たちの喜劇)、(1995年)
ドイツ語題:Das Rätsel
des Feuers、 原題:Eldens gåta(火のミステリー)(2001年)
<筆者紹介>
川合 元博(かわい もとひろ)
1957年京都市生まれ。金沢大学、大学院でドイツ文学を専攻。1984年某ファスナーメーカーに入社。同年より海外駐在員としてドイツ赴任。1991年ロンドンへ転勤。1996年現地で転職。現在、システムエンジニア。ビールとマラソンを好む。妻、真由美との間に子供3人。2000年6月より1年間ドイツに単身赴任。