昼寝
昼寝の友。冷たいソル・ブリュー・ビール。
海から帰って、ホニアラの中華料理店で昼食。水餃子にタンタン麺を食べる。レストランのお客は二組。もう一組も日本人男性の二人連れだった。K建設の作業員で、橋と道路の工事に来られているのだという。まず冷たいビールを飲む。唐辛子を追加で注文し、汗をかきながら熱いタンタン麺を食べた。
午後二時過ぎにアパートに戻り、夕方までぐっすり眠った。この昼寝が、ソロモンにいる間の日課になってしまう。とにかく、熱帯の暑さの中では、日中は、日陰で眠るに限る。実際、長旅と時差、気候の違いで、身体にはかなりの負担がかかっているはず。とにかく、眠ることにより、その負担を少しでも軽減しなければと思う。日中は日陰で寝ていても、目が覚めると、Tシャツが汗でぐっしょりとなっている。ガダルカナル島にいる間、一日に平均三回はシャワーを浴びていた。
五時頃になり、G君が魚の店を見に行くというので、ついて行く。空港へ行く途中の道端の露店には、またまた美味しそうな鯛があがっていた。でかいやつは目の下五十センチ。恵比寿さんが下げているか、優勝した力士が記念撮影の際に下げていそうなやつだ。ふたりには大きすぎるので、中くらいのやつを買いった。
またまた、アパートのベランダで魚をさばくのだが、今日は、その前にG君に頼まれていたことがあった。散髪である。頭に湿疹ができたので、丸刈りにしたいとのこと。ベランダで、電気バリカンを使い、彼の頭を平均三ミリに刈り上げた。自分の頭は時々、妻か娘に刈ってもらっている。夏の間、庭の芝は毎週刈っている。しかし、人間の頭を刈ったのは生まれて初めてだ。ガダルカナル島まで来ると、色々な経験ができるものだ。
その日の夕食は、また鯛の刺身と、白菜が手に入ったのでお浸し、ニンジンのマヨネーズ和え。魚のさばき方、刺身の引き方も、初日に比べるとぐっと上達した。しかし、さすがに長旅の疲れが溜まってきたのか、「夏ばて」のせいなのか、今ひとつ食欲が湧かない。ソロモンで「夏ばて」をしていたら、それこそ、一年中ばてていなければならないが。
ソロモン諸島の暑さは、日本の夏の暑さとそれほど変わらないと思う。京都などに比べると、海に近いので、朝夕は気温が下がり、むしろ過ごしやすいくらいかも。しかし、僕は日本を去ってもう二十三年になる。ヨーロッパの涼しい夏にすっかり身体が慣れてしまい、汗腺の数なども少なくなっているのかも知れない。
夕食後、G君に「沈船マップ」というのを見せてもらう。どの海域にどの船が沈んでいるのかが書いてある。日本の船は赤字で、連合国の船は青字で。しかし、赤青同じくらいの数、数十隻が沈んでいる。改めて、当時のソロモン沖海戦の激しさを知った思いがした。そして、その沈船が、今では魚のサンクチュアリーになっているのだろう。
休暇中に読む本をロンドンから持ってきている。しかし、ガダルカナル島に着いてからは、G君の本棚にあった亀井宏氏著「ガダルカナル戦記」全三巻を読んでいた。自分のいる場所が舞台であるのは面白い。しかし、それだけに悲惨さも余計に伝わってくる。
おじさんのお勧めだが、さすがにこの魚はふたりには大きすぎて買えなかった。