土蛍

 

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ワイン醸造所の中。

 

 ロビンの運転で、僕たちは出発した。エデンス・ランディングの町を離れて、木立の中の道を行く。道の両側の木が、ヨーロッパとは違う。何となく枝振りが曲線的、クニャクニャした感じの木が多いのだ。両側にクイーンズランド州の伝統的か家が現れる。高床式でバルコニーがある。かなり良い雰囲気なのだが、住む人がなく、打ち捨てられ、朽ち果てているものが多い。代わりに、どこにでもある現代的な家が建てられている。

 山道を登り、ブリスベーン、サンシャインコース、ゴールドコーストを一望できる高台に出る。車を停める。見下ろす景色が素晴らしい。この当たりはワイナリー(ワイン醸造所)が多く、試飲をさせてくれるとのこと。二軒のワイナリーに入り、試飲をする。試飲させてくれるのは、そのワイナリーでも自信作らしく、なかなかの味だ。ドライな赤を一本購入する。

 一軒のワイナリーで、「グローワーム」を見せてくれると言う。K子さんに聞くと、グローワームとは「洞窟の中に住む光を発するツチボタル」だと言う。ゴールドコーストの近くには、そのツチボタルの生息する洞窟がいくつかあるとのこと。しかし、その説明を聞いても、いまひとつイメージが湧かない。百聞は一見に如かず。見てみることにした。そこのワイナリーでは人工的に洞窟を作って、ツチボタルを飼っているらしい。

ツチボタルを「飽きるほど見た」というK子さん夫婦とエリーを残して、僕はレオの手を引いて、案内人のお兄ちゃんに付いて人工の洞窟へと入って行った。

最初にヴィデオで「グローワームとは何ぞや」という説明を見る。ある種の蚊の幼虫だという。幼虫の時、洞窟の壁で緑色の光を発する。同時にネバネバした糸を垂らす。その光に誘われた虫を捕って食うのだと言う。案内人のお兄ちゃんは虫取り網を持っているが、それで、ツチボタルの幼虫(ツチボタル自体が幼虫なのだが)に与える虫を毎日二千匹くらい捕ると言った。

洞窟の中では、満点の星のように、土蛍が光っていた。闇に目が慣れるつれ、それは輝きを増す。緑っぽい色だ。案内人が小さな懐中電灯で照らすと、ネバネバした液のついた糸が、洞窟の壁から下がっているのが見えた。辺りが真っ暗闇なので、怖がっているレオを抱っこし、注意して一歩ずつ前へ進む。何にも例えようのない、ユニークな体験だった。外へ出ると、真夏の太陽の光で一瞬目の前が真っ白になった。

 ロビンが昼食のためにレストランを予約してくれていた。見晴らしの良い、崖に迫り出したテラスにテーブルがあり、クジャクが放たれて、庭には熱帯の花が咲き乱れ、なかなか良い雰囲気のレストランだ。地元の人にも人気があるらしい。

しかし、その日の朝、僕は、K子さんが用意してくれた納豆、冷や奴、韓国海苔という朝飯に逆上して、ご飯を茶碗に二杯半も飯を食べてしまっていた。余り腹が減っていない。それでタイ風サラダを一皿頼んで、K子さんとふたりで分けて食べることにした。エリーは孔雀のヒヨコを見つけて喜んでいる。

 

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見晴らしの良いレストランで昼食。

 

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