中入り
三途の川の渡し船の場面が終わり、六道の辻の場面に移る前に、枝雀と文珍は休憩時間を取っています。米朝、吉朝、文我は休みなしで、後半に突入です。しかし、この話を「通おし」でやると、演者は大変疲れるでしょうね。聴いている者も、特に、渡し船での船賃の応対の場面が爆笑の連続なので、ちょっと一服しないと、アゴが外れてしまうと言うものです。ちなみに、五人の演じる時間は以下の通りです。
米朝:68分40秒
枝雀:74分39秒(前半31分12秒、後半43分27秒)
吉朝:74分55秒
文我:54分49秒
文珍:75分42秒
文我だけ、極端に短いのですが、彼には長いパターンと短いパターンがふたつあり、CDに収録されたのは短いパターンだと書いています。また、米朝も、初期の録音はもっと長かったと思います。短くなったのはお歳のせいでしょうか。
パロディーの原本が何であったかを特定するのに苦労をしています。「グーグル」その他の検索エンジンで探すのですが、キーワードがありきたりの言葉であったり、古いもの、マニアックなもの、特定の地方にだけ流れたCMなどは、なかなかひっかかってくれません。調べのつくものもありますが、まったくお手上げのものもあります。
文珍が枕で語っています。彼も、同じく「地獄」についてインターネットで調べようとしたそうです。そうしたら、「巨乳地獄」とか「緊縛地獄」とか、いわゆる「あっち系」のものばかり出てきたそうです。「それこそ抜けられまへんで」とコメントがあって大笑い。
嬉しい助けもあります。数日前、高校の同級生で、京都の岡崎で開業医をやっておられるデキガイ君からメールをいただき、「目標四百三十七て〜ん」はヒグチ薬局のキャッチコピーで、正しくは「四百二十七店」であるとのご教授をいただきました。枝雀は「四百三十七店」と言ったと記憶し、念のため速記を調べましたが、確かにそうなっています。とすると、それは言い間違えか、意図的なものなのか、どちらなのでしょうか。故人に確認することもできず、答えは永久の謎として葬り去られることになります。
前半だけでも、五人演者それぞれに、楽しい「くすぐり」がいっぱいあるのですが、それを全て紹介できないのが残念です。
私は、今、この文を大西洋に浮かぶマデイラというポルトガル領の島で書いています。目の前では末娘のスミレが宿題をやっています。窓の下は海、一日中潮騒の音が聞こえてきます。ここから一番近い陸地は、五百キロ以上離れたモロッコで、まさに絶海の孤島という雰囲気。そろそろ英国は寒くなり始めましたが、ここは、一年中気温が二十五度前後。寒くもなく、暑くもなく、過ごしやすいところです。このことは、地獄八景と何の関係もありません。只何となく書いてみただけです。
それでは後半へと進んで行きましょう。