大団円
四組のカップルでダンスが始まる。グローブ座HPより。
メランコリー男のジャックという男が登場する。ティム・マクマランという俳優がやっているが、彼だけはいわゆる「美男子」、「イケメン」ではない。癖のある顔をしている。そして、皮肉に満ちた台詞を連発する。彼が、
「・・・お次がおむずがりの学童時代、鞄をぶらさげ、朝日を顔に、蝸牛(かたつむり)そっくり、のろのろ、いやいや学校通い・・・」(福田恆存訳)
そんな台詞を喋りながら、バルコニーの一番前に座っていた小学校三年生くらいの男の子を指差した。観客の目が一斉にその子に注がれる。男の子はしょげて横を向いてしまった。観客から、
「かわいそう。」
と呟きとため息が漏れる。俳優も一瞬苦笑している。そのとき、僕は、「寄席の最前列に座って弁当を食っているおばさん」が時々漫才師のネタにされているのを思い出した。観客と舞台を近いものにするには、なかなか良いテクニックではあるが、大阪のおばさんならともかく、男の子にはちょっと気の毒であった。
ともかく、物語は大団円を迎え、四組のカップルが誕生。
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ロザリンドとオーランド
A
道化師と村のおばさん
B
羊飼いの青年と村の娘
C
オーランドの兄とシリア
彼らはめでたく合同結婚式を迎えることになる。音楽が鳴り響き、ダンスが始まったところで、現公爵からの使者が現れる。公爵の位を乗っ取った弟が改心して、兄に位を譲るとこにしたという。ハッピーエンドに更に「ハッピー」が追加される。
「ここまでやるの、ちょっとやりすぎでは。」
と思わせつつ、芝居は終わり、ダンスをしていた俳優達は一度舞台から去り、そのあと再び現れ、カーテンコールとなる。
カーテンコールは舞台の三つの辺に登場人物が三分の一ずつ立ち、踊るのである。それも、シェークスピア時代の踊りではなく、ジャズダンスみたいなやつを。十六世紀の衣装を着た人たちが、現代的な音楽に乗って踊っている姿は・・・はっきり言って奇妙に「サマ」になっていた。
以前、北野武(ビートたけし)の監督、主演の「座頭市」の映画を見た。時代劇でありながら、最後は村人たちのタップダンスで終わる。それについて色々と批判もあったようだが、どうせ作り事なのだし、娯楽映画なのだし、目くじらを立てることもないのでは。ともかく「座頭市」とオーバーラップさせながら、僕は登場人物たちのダンスを見ていた。
ロザリンド、シリア、まともな格好をした道化師タッチストーン。グローブ座HPより。