雪の上のピクニック
JR日光駅。これを見ただけで日光へ来た価値がある?
翌朝、三月二十二日、午前十時にワダさんの運転で宇都宮を出発した。朝食後、ワダさんは、AT車のトランスミッションの略図を僕の為に印刷してくれていた。律儀な人である。なるほど、そうだったのかと、納得をすることしきり。
出発前、ワダさんが、
「今日是非見たいところ、ありますか。」
と聞くので、JR日光駅と答えておいた。ものの本によると、JR日光駅は、重要文化財である門司港駅、旧二条駅(現在は梅小路博物館)と並び賞される、名建築であるという。
最初高速道路を行くが、途中から日光街道の杉並木に入る。雪を頂いた男体山が近づいてくる。天気は良く、白い山が青い空に映えている。日光の町に入る。東武鉄道のちょっと派手めな駅の隣にJRの日光駅はあった。薄いピンク色の建物である。非常に繊細な印象を受ける。正面からの姿も良いが、裏手の橋の上から、雪の山をバックにした姿も素晴らしかった。僕は、この駅を日本でも五本の指に入る「美しい」駅であると勝手に断定した。
サチコ夫妻は、その駅の前で大阪の知り合いとばったり出会い、
「奇遇でんなあ。」
なんて話をしている。駅を見て、僕の今日の目的は果たされたわけだ。
「せっかくここまで来たのだから、ついでに『東照宮』も見ていきますか。」
そんな感じで、車を停め、東照宮の中を見学する。キッチュな建物の連続である。色の使い方が日本のものでない。僕は、南インドで見たヒンズー教の寺と、その屋根や内部の色使いを思い出した。残念ながら僕の美意識では到底理解できない建物であった。
僕らは奥日光へ向かう。「いろは坂」を通り、中禅寺湖畔へ出る。しばらく走り、龍頭の滝を見る。この滝は華厳の滝のように垂直に落ちるタイプではなく、傾斜のある早瀬を水が滑り落ちている。この後戦場ケ原を横切り、一番奥の湯元に着いた。湖はまだ半分凍結しており、湖畔は雪に覆われているが、三月の陽光は暖かく、寒さを全く感じない。
湖畔にピクニックテーブルがあったので、サチコと雪を踏み分けながらそこまで行く。ワダさんは車のトランクの中からなにやら装備を取り出し中である。ワダさんは登山用ガスコンロ、とアルミのヤカン、マグを持って現れた。そこで、コーヒーを沸かして飲もうというわけである。サチコがチョコレートを配給する。間もなく湯が沸き、フィルターコーヒーが入れられた。雪の上で、青い空と白い山を眺めながら飲むコーヒー、最高の味。
ワダさんも写真が大好き。その日もあちこちで僕以上にパチパチと撮っておられる。カメラ、装備を見ても、金がかかっているのがわかる。彼の写真を何枚か見せてもらったが、どれもプロ並みに撮れている。
「良い写真を撮る秘訣って何でしょうね。」
僕が聞くと、彼はいたずらっ子のような目になって答えた。
「とにかく枚数を撮ることですよ。中には良いのもありますよ。」
雪の上でコーヒーを沸かす。