元旦の朝
カンタス航空機。尾翼にカンガルーのマークがついている。
二〇〇八年の元旦を僕はオーストラリアで迎えた。
昨夜は十二頃に一度目が覚めて、冷蔵庫からミルクを出してそれを飲み、また眠った。次に目が覚めると辺りはもう明るい。窓から空を見ると、太陽が照り、しかも雨が降っていた。午前七時。K子さんたちを起こさないように注意しながら、防水のウィンドウブレーカーを着て外に出る。坂を下りて、またエリーの学校まで行ってみた。そこから別の道で帰ろうとしたのが間違いの元だった。道に迷った。誰かに道を聞きたいのだが、元旦の朝七時半、普通の人間は疲れ果てて眠っている時間だ。やっと一軒の家の前で煙草を吸っているひとりの男性を発見。
「ハピー・ニューイヤー!」
とまず握手をして、それから道を聞く。最近越してきたばかりでこの辺りのことを知らないと言う彼だが、学校へ行く道は知っていた。一度エリーの学校まで戻り、そこからいつもの道でK子さんの家に戻る。
八時半ごろ、K子が起きてくる。おめでとうと挨拶。彼女は朝起きてシャワーを浴びるらしく、朝はいつも髪が濡れていて、何となく艶かしい。昨夜は十二時過ぎに戻ったそうだ。K子さんが雑煮を作ってくれた。「年越しそば」に「雑煮」。感激の極みだ。
九時ごろにロビンとエリーが起きてきた。エリーはもちが好きらしく、醤油をかけ、海苔を巻いて食べている。その横で、ロビンはクロワッサンを食べていた。
十時にK子さんの運転で家を出て、空港に向かう。帰り道、ブリスベーンには二十四時間も滞在していなかった。
「今度来るときは、もっとゆっくりしていってね。」
とロビンとK子さんが言った。
途中で給油をする。今回は僕も車から降りて、建物の中に入る。前回、K子さんが「愛想の良い可愛いお姉さん」がレジにいると言っていたからだ。しかし、その日はお兄ちゃんがいた。ふたりでまた笑う。
空港に到着。今回もチェックインカウンターまでK子さんが付いてきてくれた。チェックインを済ませた後、彼女が、
「モトさん。通路側の席を指定しなくてよかったの。」
と聞く。そうだ、すっかり忘れていた。往路ではあれほど気にしていたのに。条件反射の鎖は断ち切ることができたようだ。搭乗口でK子さんとハグをして別れる。彼女とハグをするのはこれで三度目だ。
今回、妻への土産はまだ買っていなかった。K子さんの勧めで、オーストラリア名産のオパールのネックレスを空港の免税店で買うことに決めていたからだ。宝石店へ行き、オパールを選ぶ。石によってずいぶん色が違う。僕は、青っぽい緑の石に決めた。それが、ソロモンの海の色に一番似ていたからだ。
買ったオパールはソロモンの海の色。