覚悟を決めなきゃ
ジャングルの中の川で洗濯をする女性。
O隊員に、
「最初、この任地に来たとき、どう思いましたか。」
と聞いてみた。ジャングルのど真ん中、電気も、水道も、電話も、インターネットもない暮らし。
「一瞬ショックだったけど、次の瞬間には覚悟を決めました。」
彼女はそう言った。強い人なんだ。
「荷物なんてどうして村まで運んだの。」
と聞くと、学校の生徒が分担して、運んでくれたと言う。一番力の強い子がスーツケースを持ってくれたという。
彼女の任期は三月まで。彼女が無事任期を勤め上げ、元気で帰国されることを祈らずにはいられない。でも、あれほど現地に同化した生活をしていると、生徒や村人別れるときは、きっと辛いだろうなと思った。
最後の夜ということで、僕はお世話になったG君をホニアラ最高級のホテルのレストランへ招待した。一番高いエビとカニを食って、ワインを頼んで、四百ソロモンドルだった。ふたりで六千円。おそらくこれ以上の散財はこの島ではできないと思う。
夜から大雨になり。雷の音で何度も目が覚めた。朝起きると、雨はおさまっていた。
十二月三十日。いよいよソロモンを去る日だ。
朝食の後、G君がオフィスに顔を出さなくてはいけないというので、例によって、金魚のフンのようについていく。彼の仕事は十分ほどで終わった。まだ時間は十分にあるので、JICAの隣の、「アイアン・ボトム海峡ホテル」の海に突き出したテラスでコーヒーを飲む。この辺りの海は三回のソロモン海戦の激戦地で、多くの船が沈んでいる。それで、「アイアン・ボトム」、「鉄の海底」と呼ばれるようになった。しかし、眺める海は実に平和で美しい。何時間眺めていても飽きない海だ。それに海の上のスコール雲も変化があって、その変化を観察していると実に楽しい。
G君と僕は、そこで一時間ほど海を見て過ごした。いつもオフィスの窓から海を見て仕事をしているG君にとっては、それほど感激的ではなかったかも。でも、出発前のくつろいだ一時だった。
アパートに戻る途中、教会の前を通る。ちょうど日曜日のミサが終わったらしく、「良い格好」をした人々が教会から出てくる。カラフルなスカートやワンピースの若い女性は、熱帯の太陽の下で特に美しく見える。
アパートに戻り、インターネットでブリスベーン空港の出発状況を調べる。ブリスベーンからの飛行機が無事飛んでこないことには、こちらを出発できないからだ。ところが飛行機は定時に出ていない。慌ててK子さんに電話をする。
「こっちは嵐よ。飛行機飛ぶのかしら。」
うーん。悪い予感がする。
最後の晩餐。豪華ディナーを記念撮影するG君。