サラダでクリスマス

 

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飛行機の中で見る夢は青い海を椰子の林。

 

 今回の旅の最終目的地は太平洋に浮かぶソロモン諸島のガダルカナル島だ。自分で選んだ道とは言いながら、考えるだけでゾッとする長旅。無事辿り着けるか百パーセントの自信が湧いてこない。先ず、ロンドンからシドニーへ。さすがに飛行機は一度に飛べないので、シンガポールに立ち寄り給油をする。シンガポールまでが十三時間。そこからシドニーまでが七時間半だ。シドニーからカンタス航空の国内線に乗り換え、ブリスベーンまで一時間半。そこで二日間過ごした後、ソロモン諸島ガダルカナル島まで更に三時間半の飛行機の旅。飛行機に乗っている時間だけで片道二十七時間!

 昨年の暮れ、幼なじみのG君から、JICA(国際協力機構)の仕事で、一月からソロモン諸島に単身赴任するという連絡を受けた。しかし、それだけでは、彼をはるばる太平洋の孤島まで訪れる気にはならなかっただろう。その時、ソロモン諸島の首都、ホニアラ(何とも力の抜ける名前ではないか)への飛行機がオーストラリアのブリスベーンから出ていると彼が書いてきた。その一言で僕の心が決まった。

ブリスベーンには英国で一緒働いていて、その後英国人の御主人と一緒にオーストラリアに移住した、K子さんが住んでいる。彼女とは職場でも気の合う、好い話し相手だった。それで、クリスマス休暇に有給休暇を組み合わせて、G君とK子さんのふたりに、まとめて会いに出かけること決めた。家族に同調者はなく、結局独り旅となった。

 旅立つに当たり、ふたつの障害があった。仕事と家族だ。クリスマス前後は同僚が皆休みを取りたがる。しかし、クリスマス前後も商売をやっておられるお客さんもあるので、誰かが残らなくてはならない。それを上手く段取りをしないと休みが取れない。もうひとつは家族、特に娘たちだ。こちらではクリスマスは家族で過ごす日、「ファミリー・デー」。その時、お父さんがいなくなることに対し、妻と年長のミドリは比較的寛容だったが、末娘のスミレはブーブーとうるさいこと。ともかく、そのふたつのハードルは克服できた。

 次は切符の手配。旅行会社に頼むと、ブリスベーンまでの切符は、もう十月ではあったが、クリスマスの前でメチャ高いのを我慢すればまだ手に入った。しかし、ブリスベーンからホニアラへ飛んでいる「ソロモン・エアライン」の切符は、英国の代理店では扱っていないと言う。僕はG君に切符の手配を頼み、数日後、彼から電子チケットの確認書がEメールで届いた。金額が、「四千三百ソロモンドル」となっている。それが高いのか安いのか、見当もつかない。オーストラリアはビサが必要なのでそれも準備。まあ、色々あったが、目出度く船出の運びとなったわけだ。

空港内のパブに行き、ビールを頼む。同じ飛行機でオーストラリアに行く老夫婦と同席だった。キャンベラに住むご主人の妹さんの家で、クリスマスを過ごすのだと言う。

「クリスマスにオーストラリア人ったらサラダを食べるんですよ。信じられますか。」

奥さんが言った。英国ではクリスマスには七面鳥とクリスマスプティングと相場が決まっている。日本人が正月に雑煮が食べられないとこぼしているようなものだなと僕は思った。

 

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オーストラリアのクリスマスは何と言ってもバーベキューとサラダ。

 

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