風の強い日
昼間のイアの街も良いものである。青い風が街を吹き渡る。
昨晩に引き続き二度目のイアだが、昼間のイアというものまた良いものである。青い海、青い空に白い町並みが見事に映えている。斜面に立てられた建物の多くが、ホテルかアパート。しかし、そのテラスに寝椅子は並んでいても、その寝椅子で寝そべっている人がいない。ここももうシーズンオフなのである。この街が気に入ったマユミは、一度このホテルの中のひとつに泊まってみたいと言っている。
サントリーニ島は風の強いので有名、風車もある。今日も風が強く、風が崖の下から吹き上げてくる。イアは立体的な街なので、自分よりも上に人間がいることも多い。と言うことは、スカートやワンピースの女性がいると・・・時として、見ようと思わなくても、その中身が見えてしまう。目のやり場に困ると言うか。マユミもヒラヒラワンピースの裾を押さえるのに苦労をしている。
「パンツくらい見せてあげてもいいんじゃない。減るもんじゃないし。」
この際、目の保養をいたしましょうという気分。
昨日夕日を見るのに皆が集まっていた展望台で、若い日本人のカップルと出会い、こちらへ来て初めて日本語で喋る。
「ハネムーンですか?」
と訪ねると、単なるバックパッカーだとのこと。でも、女性の方は、なかなか趣味の良い、こちらの海の色のような色のワンピースを着ている。
「ハネムーンなんですか?」
と、またまた逆に質問されたのには参った。こっちは銀婚式だっていうのに。
近くの浜で、バーベキューをしているグループがあった。かなり大きな動物を丸ごと串に刺して、クルクル回しながら焼いている。そのバーベキューを一匹の犬が見ている。
「それ、羊ですか。」
と串をクルクル回転させているおばさんに聞いてみる。
「そうよ、羊よ。言っておくけど、犬じゃないからね。この犬はね、実は明日食べるの。」
彼女は足元の犬を指差してニヤリとして言った。もちろん冗談。
その日は夕方、ワイン工場のテラスで、沈む夕日を眺めながら夕食を取ることになっていた。それでイアから一度アパートに戻る。アパートのプールに入るが、浄化層のフィルターの調子が悪いらしく、水が濁っている。前が良く見えないところで泳ぐのは難しい。何度も突然現れた壁に手をぶつける。痛いので泳ぐのはやめにする。
六時前にワイン工場に向かう。工場は崖の上にあり、眼下にはカルデラの湾が広がっている。ここもイアと並ぶ夕日のスポットであるという。三段に分かれたテラスになっており、テーブルがテラスの手すりに沿ってずらりと並べられている。僕は十勝池田の「ワイン城」を思い出す。レストランかと思って、夕食を期待してきたのだが、残念ながらワインと軽食だけとのこと。夕食は後で改めてということで、チーズとガーリックブレッドを酒肴に、白ワインを飲みながら、夕日を鑑賞することにする。
浜辺で羊の丸焼きバーベキューをするグループに出会った。