社交的な人たち
人気のない砂浜もロマンチックだと思いません?
今朝も七時ごろアパートを出て、海岸沿いの道を散歩する。一度ペリッサの方角に歩き、戻ってくる途中、前からどこかで見たお姉さんが。マユミである。彼女は僕が部屋を出て行ったのを聞きつけて、起きてきたらしい。彼女が日の出の見える時間に起きてくるのは初めてである。
ふたりで日の出を見に波打ち際に行くと、既に先客がいた。三十台の男性と、金髪の巻き毛の小さな女の子である。話しかけると、オーストラリア人で、現在は英国のロンドンに住んでいるとのこと。ふたりだけかと思っていたら、横に置いてあるバスケットの中に小さな赤ん坊がいた。息子さんで三ヶ月だという。女の子はアニーと言う名で、三歳だということだった。アニーは人見知りをしない、物怖じしない子だ。
同じ英語を話す人たちでも、英国人とオーストラリア人の気性はずいぶん違う。英国人の周囲には何か他人の侵入を許さないバリアーを感じる。それに対して、オーストラリア人は、開けっぴろげで、初めて会った人にもどんどん自分をさらけだしてくる。
オーストラリアのゴールドコースト出身の父親、アーロンも、そういう意味では典型的オーストラリア人であった。自分の生まれのこと、家族のことを訪ねもしないのにどんどん話してくる。お父さんの「身上話」のお相手は社交的なマユミに任せて、僕はアニーを連れて波打ち際にいく。風がなく波も穏やかで、まるで池の畔にいるよう。少し上がった太陽に照らされ、水面がきらきらと輝いている。
僕はアニーと石投げを始めた。平たい石を水面にバウンドさせるのだ。
「フラットな(平たい)石を選ばないといけないよ。」
とアニーに言う。彼女は、石を拾っては、
「これフラット?」
と僕に聞いてくる。その仕草がとても可愛い。お父さんが社交的だと子供まで社交的になるのかな。しばらくして、僕はアニーの手を引いて、お父さんとマユミと赤ちゃんのところへ戻った。
先ほど、一般に英国人はそれほど社交的ではないと書いたが、英国でも、北のスコットランド人は社交的で、話好きであると思う。うちの会社の掃除のおばさんにも、ひとりスコットランド人がいるが、毎朝元気なスコティッシュ(スコットランド訛り)で、
「グッドモーング・ツーユー。」
と、「ツーユー」、「おつゆ」つきの挨拶をしてくれる。
アパートには十組ほどのカップルが泊まっているが、ロンドン・ガトウィックからの飛行機で着いたのは僕たちだけ、他の人たちはマンチェスターかニューカッスル発の飛行機で来た人たちである。その中でも、ニューカッスル組が多いようだ。彼らは、皆話し好きである。顔を合わせたときなど、こちらに興味を持って話しかけてきてくれる。隣の部屋のテリーなど、話し始めたら止まらない。よく考えたら、ニューカッスルはイングランドでも、限りなくスコットランドに近い場所であった。
僕らの泊まっていたアパートメント「オリンピア」。ニューカッスルから来た人が多かった。