新しい島
停泊中のオランダの客船のすぐ横を通過。
五時過ぎに目が覚め、その後眠れない。ロンドンではまだ三時だなどと考えず、七時間も眠ったのだからと肯定的に考えることにする。七時少し前に起きだして、昨日に引き続き、五百メートルほど離れた海岸へ。また日の出を見る。雲の具合で、日の出の景色も毎日違う。今日は昨日よりも一段ときれいなような気がする。
八時より朝食を作る。飯と味噌汁。何せ鍋がひとつしかないので、作り方に工夫が必要である。飯を炊いて炊き上がったらそれをフライパンに移して保温し、その空いた鍋で味噌汁を作る。今日もけずりたての鰹節をたっぷりと使ったてだしを取る。朝の散歩から帰ってきたマユミが部屋に入るなり、
「鰹の良い匂いがする。」
と言う。この鰹節、高知の友人に送ってもらった、土佐節の最高級品なのである。
十時にアパートを出て、「火山ツアー」の集合場所、近くの高くて新鮮ではない「ユーロマーケット」の前に行く。何人かの人がバスを待っている。隣で別のバスを待っている夫婦はオーストリア人、ドイツ語で話す。これからサントリーニ島の最高峰五百四十メートルに登りにいくという。
「アルプスで有名なオーストリアの方なら、五百四十メートルなんて『屁』みたいなものでしょう。」
とコメントしておく。
バスにピックアップされてサントリーニ島最大の港、アティニオス港に着く。港は崖の下にあるので、バスは、何度もヘアピンカーブを抜けながら降りていく。途中、昨日訪れたフィラの街と、その街の崖下に停泊する、数隻の客船が見える。
僕らが乗った船は、わざと「パイレーツ・オブ・カリビアン」風の古い帆船を模して作られていた。マストが立っているが、別に帆が張られるわけではなく、ジーゼルエンジンで動く。五十人余りの乗客を乗せて、船は十一時過ぎにアティニオス港を離れる。ふたりのガイドが同乗している。ひとりはギリシア語、スペイン語担当のお姉ちゃん、もうひとりは英語、ドイツ語担当のお兄ちゃんである。どちらもタンクトップにショートパンツで見事に日焼けしている。
船はフィラの崖下にあるオールドポートでまた数人の乗客を拾った後、オランダから来た豪華客船の横を通り、火山活動で出来た島「ネア・カメニ」へと向かう。客船のすぐ横を通るが、船は見上げるばかり。巨大である。
「ネア・カメニ」とはギリシア語で「新しい島」という意味だとのこと。この島はキリストが生まれた頃には、まだ存在していなかった。その後の、数回の活発化した火山活動により生まれた島である。つまり、二千年間で作られた島。地球の誕生から何億年という時間が経っているが、それに比べると二千年なんか取るに足らない時間、文字通りの「出来立てホヤホヤ」の島なのである。ということで、まだ湯気が立っている。
ネア・カメニに上陸。対岸のフィラの街を望む。