ポヨ子さんの手記、カサヴァ・プディングの作り方

 

カサヴァを巨大な「おろしがね」ですりつぶすカレンとスミレ。

 

わたしが村に滞在した最後の数日は、先生たちのワークショップ(研究会)とのことで授業がなかった。その間、わたしは一緒の部落に住むティーンエージャーたちと過ごした。

月曜日、スワンソン、メトカーフ、ケヴィンとグレンで魚を捕りに行く。スワニー(スワンソンのあだ名)とメティ(メトカーフのあだ名)のふたりはトーマスとメアリーの息子。十歳前後だと思う。十代の後半だと思われるケヴィンとグレンは、学校でのわたしの「生徒」、スワニーとメティの従兄弟とのことだった。わたしは彼らの後について川に降りて行った。彼らが水中眼鏡をして、銛を手に持って、水の中に入って行くのを、わたしは川岸から見ていた。

その頃には、わたしは男の子たちと一緒にいるのに慣れていたし、何よりも、彼らが、わたしが傍にいることに慣れてきていた。最初の頃、男の子たちはわたしを何となく避けていて、わたしが近づこうとすると、そそくさとその場を立ち去ったものだった。今では、彼らは隣に座ってくれるし、わたしが居ることを受け入れ、わたしに対して自然に振舞ってくれる。その日、魚は獲れなかったが、ザリガニを何匹か捕まえたようだった。

火曜日、メアリーとおばあちゃんが「カサヴァ・プディング」を作るという。娘さんのカレン、リツコさんとわたしがお手伝いをすることになった。材料はカサヴァ(Cassavaサツマイモによく似た芋)、バナナ、ココナッツ・クリーム。何と、作るのに丸一日かかる料理とのこと。

作業は台所の土間で行われる。まず、カサヴァの皮を剥き、マッケンジー家が何十年にも渡って使っていると思われる巨大な「おろしがね」で、それをつぶしていく。わたしがすりつぶすのに、苦労していると、つぶし易いようにと、誰かが小さめに切ってくれた。割ったココナッツの中身をほじくり出し、同じようにつぶしていく。これも結構骨が折れる。同時に二十本以上のバナナも皮を剥いてこれも、上から木の棒で叩いて、グチャグチャとつぶす。つまり、全ての材料をすりつぶすのだ。ココナッツの肉を絞ると、トロッとしたココナッツミルクができた。すりつぶしたカサヴァとバナナは、ココナッツミルクを加え、一緒にグチャグチャと混ぜる。

皮を剥き、刻み、すりつぶし、絞り、混ぜるという一連の作業が終わると、次は、プディングを焼く「オーブン」、火床の準備に取り掛かる。先ず台所の床に、大きめの石を直径一メートルほど円形に並べる。そして、その中に、やや小さめの石を、台所の床が隠れるくらいに敷き詰める。その上に、焚き木になる小枝を積み重ね、その上にもう一度石を乗せる。そして、その焚き木に火をつけるのだ。

木が黒い炭や白い灰になる頃には、石は焼けて真っ赤になっている。その炭や灰を掻き出し、一番上に乗せてあった石を脇へ避ける。ものすごい熱さだが、メアリー、カレン、お祖母ちゃんはずっと火の傍で働いている。木の燃えカスを全て取り除いた後、「オーブン」の上にバナナの葉を敷き、混ぜ合わせた材料を薄く延ばす。その上にまたバナナの皮を乗せ、熱せられた石を乗せ、これでその日はお終い。一晩がかりで焼き上げるのだ。

 

ココナッツミルクを絞るリツコさん。

 

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