ポヨ子さんの手記、リツコさんに会う

 

右端がリツコさん。

 

 ソロモン滞在三日目になり、色々な人に会うにつれて、わたしの心も和らいできた。そして、ここにいることを楽しいと思えるようになってきた。

 まず、Gさんの働く、そしてわたしも少しの間だけ仲間に入れてもらう、JICA(国際協力機構)の組織とそのメンバーのことがだんだんと分かってきた。

わたしは午前中、JICAの職員のヴィクターと一緒に、車でヴィサレという村に行った。そこには、着任したばかりの、ニナくんとツルちゃんというふたりの日本人ボランティアがいる。ふたりはこれから二年間の契約で、そこで働くとのことだ。道中、車の中から、緑に包まれた美しいガダルカナル島の風景が見える。ヤシの木の群落、木々で覆われた丘、そしてその木々は柔らかそうな苔で覆われている。

ヴィサレは、首都ホニアラから海岸沿いの一本道をひたすら真っ直ぐ行った場所にある。村に入り、わたしはその美しさに息をのんだ。白い教会、芝生で覆われた校庭、村の背後には緑の丘があり、反対側は青い海。二十代の中ごろに見えるニナくんとツルちゃんは、その村での生活を始めたばかりだった。彼らの家に連れていってもらったが、見晴らしがよく、水道もあり、部屋もとても居心地が良さそうだった。自分が滞在するベティヴァツの家も、こんなのだったらいいなという期待が、わたしの心の中に広がる。

その日の午後、わたしは初めてリツコさんに会った。彼女はわたしがこれから行くベティヴァツ村に住み、そこの学校で働いており、わたしの面倒をみてくれることになっている人だ。

リツコさんとはJICAの「ドミトリー」、通称「ドミ」で会った。わたしは、日本人のボランティアの人たちは、ずっと派遣された場所に住んでいて、首都へは滅多に帰って来ないものだと思っていた。しかし、ベティヴァツのパンピリアという部落に住んでいるリツコさんが、今ここに居るように、ボランティアは時々首都に戻って来る。そして、首都にいる間は、この「ドミ」に住んでいるとのことだった。ボランティアが週末や休暇を過ごすその「ドミ」は、ちょっと乱雑で、それでいて居心地のよさそうな、兄の居る大学の寮を思い出させる場所だった。

ともかく、その「ドミ」でリツコさんはわたしに、これからわたしが三週間を過ごすベティヴァツについて、色々な説明をしてくれた。彼女の話はどれもわたしの心をホッとさせるものだった。村人たちは「鋭い視線」をわたしたちに向けるけれど、根はシャイで純朴な人たちであること。大きなクモがいるけど、何より、村は美しい場所で、人々はとても親切であること。ベティヴァツには戒律の厳しいカトリックのコミュニティーがあり、殆どの村人たちは、煙草を吸ったり、酒を飲んだりしないこと。そして、リツコさんの言うとおり、村は美しく、人々は親切だった。

その日、リツコさんや、他のボランティアの人たちと話して、わたしの心は随分と軽くなった。

 

日曜日のミサの後、フルートを吹く。

 

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