ボランティア先探し
ジャングルの中を歩いて村へ向かう。
僕とスミレは車で家に向かった。道中、スミレの口から、ソロモン滞在中にあった色々な出来事が飛び出してくる。どれも面白い話なので、メモでも取りたいと思うが、運転中でそれもできず、相槌を打ちながら、できるだけ内容を記憶しようとする。
スミレが話し始めた興味深い旅のエピソードは後章に譲り、先ずは、スミレがソロモンへ行くきっかけとなった「発端」を紹介することにする。
話は今年の一月に遡る。スミレが、
「今年の夏休みは何をしようかな。」
と言った。英国では、ティーンエージャーも後半になると、夏休みの間、何か「アクティヴィティー」をする子が多い。例えば、旅行、キャンプ、ボランティア、アルバイトなど。お金のない子には、小学生の団体旅行の付き添いでまず資金を稼ぎ、交通費を浮かせ、それが終わってから自分で引き続き旅をするなんていうのもある。
昨年、二〇〇七年に、スミレは金沢の石川県国際交流ラウンジでボランティアをした。石川県に住む外国人を援助するNPOで。スミレは三週間、妻の実家から職場に通い、日本人の職員の方だけではなく、そこを訪れる外国人の方とも仲良くなった。日本語も上達して、なかなかよい経験だったと思っている。そのボランティア先を探したのは僕。昔の同僚の奥さんそこで働いておられたので、そのコネを使って、無理矢理お願いしたのだ。
さて、今年もスミレのボランティア先探し。また同じ所ではつまんないだろうし。同じ方の好意に二度もすがるのも、厚かましすぎる。そこで「ピン」と来たのが、僕が昨年の暮れに訪れたソロモン諸島、ガダルカナル島。そこでは、幼馴染のG君が、JICA(国際協力機構、外務省の外郭団体)から派遣され、海外協力隊の隊員の元締め、いやコーディネーターとして働いている。若い日本人の隊員たちが、離島やジャングルの中の学校で教えていることは知っていた。G君に頼めば、スミレをどこかの村の学校に潜り込ませてくれるかも知れない。また、ソロモンでは、首都ホニアラを除けば、電気、電話、水道、インターネット、テレビは言うに及ばず、郵便配達制度までないことも知っていた。都会育ちのスミレがそんな生活を体験してみるのも良いのではないかな。
まず、スミレに打診。
「スミレ、ソロモン諸島の学校で、働いてみないか。僕も行ったけど良い所だよ。」
もっと迷うかと思ったら、彼女は、こちらが拍子抜けするくらいあっさりと「うん」と言った。
次はG君。
「スミレが夏休みに数週間そちらの学校でボランティアをしたいと言っているけど、段取りをお願いできませんか。」
そちらも、ごくあっさりと「よっしゃ」という返事。これで、スミレのソロモン諸島行きが決定した。
村に到着。学校の先生と握手。