問題氷解
夕食後、ホテルの周囲を散歩。木漏れ日が美しい。
オーディオブックCDを聴きながら運転する。僕は本中毒、旅行や出張に行く際、駅や空港、車内な機内で暇さえ有れば本を読んでいる。残念ながら運転しながら本は読めない。そんな時は、「オーディオブック」、つまり朗読を鳴らすことにしている。今日は「アガサ・クリスティー」。これは誠に都合がいい。本を読んでいるのと同じ。運転時間が短く感じられる。面白い話だと、目的地に着いてももっと乗っていたい、もっと聴いていたいと思うくらい。
バーミンガムのサービスエリアで二十分間休憩。さすがに三時間連続運転は無理。スターバックスでコーヒーを買って飲む。バーミンガムを過ぎると料金所があった。四ポンド七十ペンス払う。英国の高速道路は全て無料だと思っていたが、最近はそうでもないようだ。しかし、乗っている時間、距離に関係なく、そこを通った車から一律の料金を巻き上げるというのは、日本にはない発想だ。
前もって印刷していた「グーグル」の地図を見ながら、無事マンチェスター空港のすぐ横にあるマンチェスター支店に到着。休憩時間を除くとちょうど三時間で着いた。駐車場に車を停める。着陸する飛行機が建物をかすめるように通過していく。
支店長のテリーは不在とのこと、担当者のサキラとクレアという若いお姉ちゃんと一緒に仕事を始める。今回の僕のミッションは、僕が自分で組んだ「ローディング・マニフェスト」(荷積明細書)プログラムの問題分析と調整だ。一週間ほど前、ヘルプデスクを担当している部下が、
「マンチェスター支店から、出したトラックの、実際の積荷と荷積明細書が合わないという苦情が来ている。自分で調べたがどうにも分からない。」
と言ってきた。確かに、データを見る限りでは、どこもおかしいところはない。ところが実際には乗せていない荷物が、明細書に現れるという。テスト環境を作って自分でやってみても、問題は起きない。おかしいなあ。何かプログラムが予期していない、特別な操作が行われたのだろう。
「実際、現場に行って、荷積みに立ち会うのが一番手っ取り早いよ。」
と僕は言った。それで、向こうの支店長、こちらの部長の決裁を取って、本日僕がその立会いに行くことになったのだ。
サキラが、
「今日も同じ問題が出たよ。」
と言う。
「何したの。」
「一度トラックに積んだけど、容積の関係で乗り切らなくて、また降ろしたの。」
と彼女。その一言で疑問が氷解した。「アンロード」つまり、一度乗せた荷物の取り消しのロジックに不具合があったのだ。その日は午前中をかけて、プログラムを修正する。普通、原因を見つけるのに永い時間がかかることもあるのに。今日はラッキーだ。
ホテルの周辺には、なかなか味のある家があった。