地獄八景亡者戯聞き比べ − 冥土のエンターテインメント(映画編)
(テレビ)
文我に拠りますと、冥土にはテレビ局もあります。「お化け番組」と言うのは、冥土から始まったらしいのです。
MTV、命日放送はドラマが売り物。「ロング・オバケーション」、西村晃主演「水戸黄門」ならぬ「人を拷問」、京塚昌子主演「火のっ玉母さん」などをやっています。
ATV、阿弥陀テレビはアニメで有名です。石ノ森章太郎の「仮面シンダー」、藤子不二夫の「ドザエモン」、主人公は水死体とのことです。
KTV、棺桶放送の看板番組は、「病気の鉄人」。喪服に身を包んだ司会のケガタケシが登場し、
「私の記憶の薄れるほど、病気は進む。今日のテーマはエイズ!」
などと語ります。墓場六三郎、珍ナンマイダ等の東西の名人が登場。名人にはそれぞれモットーがあります。「病気は心じゃ」「ばい菌もちょっと工夫でこの辛さ」。
YTV、幽霊放送では、「欽ちゃんの火葬場大賞」。(萩本欽一はまだ存命なのですが・・・)
(映画)
映画もあります。渥美清がこちらへきて始まったのが、「昇天の寅さん、冥土はつらいよ」シリーズ。笠知衆の御前様も再会を喜んでおられることでしょう。
伊丹十三監督と三船敏郎主演で作られた映画は「七人のお葬式」。(以上吉朝)
「セーラー服と機関銃」もこちらでは、夢のキャスト、宮本武蔵と紫式部でリメイクされています。紫式部にセーラー服を着せようとしましたが「嫌どすえ」と拒否されたので、十二単(じゅうにひとえ)で出ています。それで、タイトルも「十二単と二刀流」。(枝雀)
SFXの超大作、出演は親鸞、法然、道元、日蓮(有名なお坊さんばっかり)、その名も「スター・ボーズ」。(吉朝)
よくも、色々と考えつくものです。しかし、こうして見ますと、落語が演じられた直前に、どなたがお亡くなりになったが、よく分かります。西村晃(没年1997年)、石ノ森章太郎(1998)、藤子不二夫(1996)、渥美清(1996)、伊丹十三(1997)、三船敏郎(1997)、京塚昌子(1994)。宮本武蔵(1645)、紫式部(1016)。
枝雀が「セーラー服と機関銃」のネタを話したのは一九八二年。薬師丸ひろ子主演の映画の封切りが一九八一年、これはまあ当時としてはタイムリーなネタと言えるでしょう。ちなみにこの映画、長沢まさみでリメイクされるそうで、時代の流れを感じます。「火のっ玉母さん」のオリジナル「肝っ玉母さん」の放映は気の遠くなるほど昔です。(一九六八年)ブレヒトではありませんよ、京塚昌子です。彼女が蕎麦屋「大正庵」の女主人を演じていました。私の世代でもかろうじて覚えているくらいですので、若い世代には、何のことやら分からないのではないかと思います。西村晃さんなど、私の世代には、東野英次郎の黄門様に対して、「偽黄門」のイメージが強いのですが。最後は本物を演じておられたのですね。
「助さん、格さん、ちょっと懲らしめてやりなさい。(チャンチャンバラバラ)助さん、格さん、もうこの辺りで良いでしょう。」