地獄八景亡者戯聞き比べ − 懺悔で罪は滅びる

 

鯖で死んだ男が、死ぬ数日前に隠居のお葬式の手伝いに行ったことは先に述べました。この男、葬式で、帳場を預かっていて、香典を誤魔化したのです。隠居はそれをきっちり、棺桶の隙間から見ていました。

隠居:「おまはん、あの香典の中から五千円誤魔化したやろ。」

男:「そんなん、分かってますか。」

隠居:「分かったあるがな。何であんなことするねん。」

男:「帳面預かってる煙草屋の大将が、何遍も算盤入れ直しては『五千円余る、五千円余る』言うて困ってまんねん。ちょっと五千円抜いたら『ちょうど合うた』言うて、喜んでもろて。人助けはつらい。」

隠居:「そら、何をするねん。」

思わぬところで、誤魔化しがばれてしまいました。悪いことはできません。

 

 五千円くらい、可愛いものです。百五十万円(演者によっては三百万円)横領した猛者もいます。金持ちの若旦那率いる「冥土観光ツアー」の一団の、幇間(たいこもち)一八です。若旦那は、三途の川の畔には「しょうずかの婆」という老婆がいて、亡者の着物を剥ぎ取るという話を聞いていました。若旦那はそれを避けるために、何とか老婆を買収したいと思案中。それを聞いた幇間の一八が言います。

一八:「要するに、そのお婆んを金でウンと言わしたらええんだっしゃろ。お婆んを金でウンと言わすのはわたいの十八番や。」

若旦那:「そんな十八番があったか。」

一八:「あんた忘れたんかいな。あんたミナミで良え馴染みの女が居てんのに、同じミナミでまた他の女子に手ェ出しなはったやろがな。これのお母んが承知しますかいな。乗り込んできて、どうしても手切れに一千万出せ、ちゅうのんを、わたいが八百五十万に値切った、あの時の腕を買うてもらわんと困るがな。」

若旦那:「ちょっと待ちいな。あの時わたしゃやっぱり一千万出したがな。」

一八:「ああっ。」

この一八、今白状したら、「懺悔」と言って罪が滅び、地獄行きを免れると言う若旦那の言葉に乗せられ、その他の余罪も白状させられてしまいます。

 

 懺悔という概念は、仏教の世界にもあるのでしょうか。ヨーロッパのカトリック教会を訪れると、祭壇とは反対側に、小さく区切られたボックスが設けられています。これが懺悔室。ここで、人々は司祭に自分の犯した罪を語るのです。

 しかし、懺悔と言うと、私は、「おれたちひょうきん族」を思い出してしまいます。番組の終わりに、NGを出した役者が、「太ったキリスト」の前で、自分の罪を告白し、反省の言葉を述べます。それが聞き入れられたら良し、もし、キリストが手でバッテンをすると、つまり「ダメ」が出ると、上から水がザバーと落ちてくるというやつでした。

 

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