金沢のタケノコが超新鮮なワケ

 

斜面にへばりつくようにしてタケノコを掘る高野父とカツミ。

 

さて、高野家で掘られたタケノコは、高野家で供されるタケノコ料理に使われる他、どのような経路を辿るのだろう。五月六日付、北國新聞の「暮らし探検隊・金沢のタケノコが超『新鮮』なわけ」という記事を紹介する。

 

金沢市中央卸売市場では十一日までタケノコの後場市が開かれている。通常の早朝の競りとは別に、掘った日の午後に競るこの市は、市場開設とともに一九六七年に始まり、地物の味に誇りを持つ同市場の意地と、鮮度にこだわる金沢市民の好みに支えられてきた。(中略)

後市場で取引される品の最大の魅力は鮮度だと言う。

掘りたてのタケノコは、軟らかくてみずみずしいが、掘ってから時間がたつにつれてえぐみのもととなる成分が増え、チロシンなどの成分が酸化しうまみが減る。魚よりもなれるのが早いと言われるタケノコをおいしく味わうためには掘り上げた後はなるべく早く加熱し食べることである。

金沢市中央卸売市場のタケノコの後場市では、金沢市内川地区(筆者注、別所もここに含まれる)などでその日の朝に掘られたものしか扱わない。午後二時半に競り、近江町市場で売られるのは遅くとも午後三時半。朝採れた品が夜の食卓に並ぶという鮮魚なみの流通で、鮮度を守っているのだ。 

(中略)

 他県産の掘ってから二日以上たったタケノコを直だきにすると、食べた後にえぐみと苦味が残ることからも、いかに後場市の品の鮮度がいいかが分かる。

 

高野家で食べたタケノコは、実にスムーズに喉を通過した。それは、それが極限まで新鮮だったからだ。そして、その鮮度を守るために働く人々たちによって、それは支えられていたのだ。

彼らの作業を何枚もの写真に撮る。何度も転びそうになりながら。下に義父を待たせていたので、六時半に山を降りて高野家の前に行く。義父は高野家の駐車場をせっせと掃除していた。ときどき、通りかかる近所の村人と立ち話をしながら。

「働き者のお嫁さんで・・・」

と近所の人たちが妹を褒める言葉が聞こえる。その度に父は嬉しそうだ。ドロドロになった長靴は前を流れる小川で洗う。辺りは相変わらず霧のような雨が降っていた。ズボンも泥だらけで、新聞紙でも敷かなければとても車のシートには座れない。七時にカッチが仕事に出て行く。「掘り手」のひとりが降りてこられた。転んだとかで、肘に血がにじんでいる。タケノコ掘りは本当に重労働であることが分かった。それがシーズン中、三週間続くのだ。高野家の皆さん、別所の村の皆さんには、本当にご苦労さんと言いたい。

 

霧雨に煙る別所の里。

 

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