カイロ日本人学校校歌

街には至る所に回教寺院、モスクがある。

 

 二月二十日、金曜日。その日はユキがホテルまで来てくれて、一緒にギザのピラミッドを見に行くことになっていた。散歩から戻り、八時過ぎに妻と一緒に地階の食堂に降り、朝食をとる。スミレは部屋で寝ている方を選んだ。ゴマのかかった羊肉のミニハンバーグ、チーズの春巻、豆のピューレなど、見慣れないもの少しあるが、まあ、普通のヨーロッパのホテルの朝食メニューが並んでいる。

 朝食をとりながら、妻が、僕が到着するまでの四日間何をしたかを話してくれた。四日間、留学中のユキがほぼフルアテンドしてくれたみたい。彼の授業のないときは一日中、あるときは午後から、色々な場所を案内してくれたようだ。観光名所もいくつか回ったが、ハイライトのギザのピラミッドと考古学博物館には行かないで、僕が到着するまで残しておいてくれた由。

 四日の間に行ったところは・・・

一、サッカラという場所にある階段状のピラミッド。ユキと彼の友人のマフダ君が案内してくれたとのこと。風が強い日で、砂嵐で視界が悪かったらしい。

二、アレキサンドリア。カイロから列車で二時間余りの海辺の町で、魚料理が安くて美味しかったとのこと。天気がイマイチだった。

三、一日は市場で食料品を買い、ユキのアパートで料理を作った。

四、カイロ市内観光。夜に夕方ナイル河で船にも乗ったらしい。寒かった。

水曜日の午後、スミレが勉強をしている間に、ユキとマユミはカイロの日本人学校も訪問し、校長先生と会ったらしい。マユミは鞄の中から、「カイロ日本人学校・平成二十年度学校要覧」という青いパンフレットを出してきた。第一ページ目に、「校歌」が載っている。

ナイルの川辺 朝霧晴れて

今日も見上げる ピラミッド

(作詞:波多野かほる)

ひえ〜。どこの校歌も、近所の名跡が少し散りばめてあるものだが、(石川県の学校校歌には必ず「白山」、富山県の学校の校歌には必ず「立山」が登場する)これはかなり直接的だ。いずれにせよ、異国で勉強している五十名の子供たちにエールを送りたい。

 九時になり、スミレが起きてきて、ユキが到着。彼は少し痩せたみたいだが元気そうだ。彼の住んでいるナセルシティーはギザからカイロ市街を挟んでちょうど反対側なので、来るのに一時間以上かかるそうだ。ご苦労さん。

 ホテルの前からタクシーに乗り、ギザのピラミッドに向かう。タクシーを拾うのに、道路を渡らなければいけない。カイロにないもの、それは横断歩道と信号。例によって神風運転の車がビュンビュンと走る中の横断は「コツ」が必要。慣れているユキを風上(?)立てて、彼の判断に従うことにする。ユキが言った。

「走っちゃだめ。運転手の勘が狂うから。あくまでゆっくり渡ること。」

これが、エジプトの「きつねうどん」、コシャリ。

 

<次へ> <戻る>