待てばカイロの日和あり
アレキサンドリア、地引網をする人々。
二月十九日、木曜日の午前中、車でヒースロー空港に向かう。駐車場に車を停め、第二ターミナルから、十二時五十分発のエールフランス、エアバス三二一型機で先ずパリへ向かう。
パリの上空は晴れていた。シャルル・ドゴール空港に着陸する前に、僕の乗っている飛行機の影が地上に写っているのが見える。影は野原や住宅地を勢いよく通り過ぎていく。飛行機が高度を下げると共に、その影がどんどん大きくなっていく。そして、着陸する直前に、影が飛行機自身と重なった。ドスンという衝撃があり着陸。影との追いかけっこが面白かった。
空港で、次のカイロ行きの飛行機の登場口に向かう。モニターに、AF五二四便、行き先表示に「le Caire」と出ている。ふーん、フランス語でカイロは「ル・キャイル」なんだ、新たな発見をする。
僕が「カイロ」へ行くことを何人かのメル友に告げたとき、幾つかの反応があった。
ロサンゼルスのユーコさん:娘に、「モトがカイロに行く」と言うと、娘が、私も明日行くと言った。良く聞くとカイロプラクティックに行くんだって。(アメリカ人は「コンド」=コンドミニアムという風に、何でも短縮したがんだよな。)
宇都宮のさっちゃん:「待てばカイロの日和あり」(意味不明)
名無しさん:「カイロと言うからには、暖かいんでっしゃろ。」(そりゃあもう)
パリ発カイロ行きの飛行機はエアバス三百三十だった。僕は、飛行機を一目見ただけで機種を当てるという特技を持っている。「地獄の特訓」の際、窓から次々に着陸していく飛行機が見えると喜んでカーリーに、機種を逐一説明した。でも、彼女はそんなことどうでも良いって感じ。余り役に立たない特技だ。エアバス三百三十は三百人以上乗れる大きな飛行機なのだが、今日の乗客は百人以下。つまり、ガラガラだ。シャルル・ドゴール空港を離陸してしばらく、パリの上空を飛ぶ。エッフェル塔、凱旋門、ノートルダム寺院、「C」の字に大きくカーブしたセーヌ川が見える。
パリからカイロまでは約四時間の飛行。モニターに映し出されている経路を見ると、飛行機はスイスのバーゼル、イタリアのベニスの上空を飛んだ後、アドリア海の東岸をかすめるように飛ぶ。ギリシアに入り、テサロニキ、アテネの上を飛ぶ。そこから地中海を渡り、アレキサンドリアの上空を飛んでカイロに着陸というコースのようだ。
暇なので、スチュワーデスのお姉さん(一部はおばさん)を観察する。(最近はスチュワーデスとは言わないで、「フライトアテンダント」とか言うらしいが。)エールフランスのユニフォームは驚くほど地味で、濃紺のジャケットに濃紺のタイトスカート。襟のところの緑色の線がアクセントらしい。彼女たちは皆、髪をまとめたお饅頭を後頭部に乗せている。そう言えば、スミレがバレーの練習に行くとき、それと同じ髪型にしている。そうだ、バレリーナとスチュワーデスの髪型は同じなんだと、変なところで感心する。
黄昏のアレキサンドリア