ウサギに続いてヤギを食う

 

ラグーンとその先の島の様子。右端が城のある島。

 

パラソルを借りて、その下で、「陸揚げ」したクーラーボックスの中から、今朝出発前にカリヴェスで買ったパン、サラミ、チーズ、ミネラルウォーターを取り出す。サンドイッチを作って昼食。外海の方ではなくラグーンの方に浸かってみる。水は浅く深いところでも一メートルもない。そしてとても温かくて、まるで風呂に浸かっているような気分。ワタルとスミレはその「お風呂」に寝転がりチャプチャプやっている。

マユミと僕は、後ろの岩山に登ってみた。階段が付いている。注意して、ゆっくりと登る。上から鳥瞰すると、この場所の様子が読み取れた。岩山で出来た半島の先に小さな岩山で出来た島がる。その間の数百メートルの部分に砂が溜まり、砂浜とラグーンを形作っているのだ。半島側の岩山を登りきったところには駐車場がある。ひどい悪路らしいが、車でも来られるようだ。確か、旅行会社のフィルが、

「レンタカーを無傷で返したいなら、この道は通らないほうがいいよ。」

と言っていたのを思い出す。クレタ島にきて初めて、太陽が雲に隠れている。

「ダンケルク撤退作戦」風のやり方で、乗客を収容した後、十六時三十分に船は出発。上陸用舟艇の運転手も最後は船に収容しなければならないが、慣れたもので、次々にボートをブイにつないでは、船に乗り込んでくる。

ビールを買ってきて、デッキの手すりに寄りかかって飲み始める。ふと隣を見ると、同じことをやっている日に焼けた男性がいる。ビールの缶を持ち上げ、

「チアーズ!(乾杯)」

と英語で言うと、向こうも、

「チアーズ!」

と返してきた。キサモスに着くまでの一時間余、フランス人の彼と「ドイツ語」で話をする。内容はどこのホリデーリゾートが良いかという情報交換。彼は

「モルディブはとっても良いから、一度言ってみたら。」

と薦めてくれた。そう言えばドイツ人の友人デートレフ夫妻も、モルディブに行って、とても良かったと言っていた。

「モルディブの小さな島にはモーターボートで行くんですか。」

とフランス人に聞くと、

「水上飛行機で行く。」

とのこと。ふーん、なるほどね。

六時前に船はキサモスの港に接岸。下りた客の大部分が、待っていた観光バスに吸い込まれていく。僕たちは車で帰途に着く。

アパートに戻ると、翌日、出発案内の書類が置いてあった。十時までに部屋を空け、送迎タクシーの到着は午後二時半だという。午前中、まだ十分に泳げる時間がある。最後の食事。ヤギを食う。ちょっと「クセ」のある味。だから、「クセ」になることのない味だ。

 

帰りの船の上、冷たいビールでお隣さんと乾杯。

 

<次へ> <戻る>