車のない生活・車のある生活
ビーチバレーがオリンピック種目になったのだから、これも数年後にはオリンピック種目になるかも。
六月二十九日。休暇ではたっぷり眠るぞと意気込んできたのに、どうも休暇に来てから、夜中に目が覚めて眠れないことが多い。隣で眠るワタルにイビキには完全に慣れたつもりなのだが。昨夜も二時に目が覚め眠れないので、京都の母に携帯から電話をする。母は僕たちがクレタ島へ来る前から入院していた。予定ではもう退院しているはずだ。電話をすると母が受話器を取り、一昨日土曜日に退院し、元気だとのこと。安心する。安心したせいでもないだろうが、その後また七時まで眠れた。
昨日冷たい水の中で急に肩を動かせたせいか、肩が肉離れを起こしたようで痛い。今日は休養しようと思う。四日間借りたレンタカーも、今日午前中に返さなくてはならない。そうすれば、車がないという口実で、一日中アパートでゴロゴロすることができる。
しかし、子供たちはアパートで毎日、日光浴と海水浴をして過ごすのは退屈だと言う。たまにはどこかへ行きたいし、車があった方が何かと便利だと主張する。彼らの言い分に負けて、レンタカーを延長することにする。午前九時にレンタカー屋に電話をし、
「あと一週間使いたいんだけど。」
と伝えると、一時間ほどして四日前のお兄ちゃんが現れた。彼に追加の金を払い、車はロンドンへ戻る前夜まで使えることになった。
マユミと子供たちは、村のベーカリーにパンを買いに行く。旅行会社の駐在員フィルが現れたので、この辺りの「見もの」について聞いてみる。子供たちが帰ってきて、サイクリングツアーに参加したいと言うので、それを申し込む。フィルに聞くと、彼自身もそのツアーに参加したことがあり、コースは下り坂が大半、マイクロバスで追いかけてきてくれるとのこと。それなら僕も安心。しんどくなれば、自転車と僕はマイクロバスに積んでもらえば良いのだ。
「これならばあなたも安心ね。」
とマユミも太鼓判を押している。サイクリングは土曜日だ。
正午頃、ワタルとスミレがカヌーに乗りたいというので、貸しボートのある隣村までいく。
「今日、パパは休養日で、何もしないし、どこへも行かないよ。」
と言ってあったのだが、
「隣村まで十五分だし、カヌーに乗って帰ってくるだけでもん。」
ということで付き合うことにする。
ところがちょうど昼休みに入り、貸しボート屋は午後二時半までシエスタでお休み。海辺のタヴェルナで昼食を取りながら待つことにする。
そこは湾になっていた、これまでのどの海岸よりも水が暖かかった。昼食後、ビーチボールを買ってきて遊ぶ。大学で水球部だったワタルは、ボール扱いが上手い。上手すぎて誰も相手にならなかった。
ケッタイな食べ物。スタッフド・オバジーン、肉詰めナス。