マイケル・ジャクソンとミノタウロス
マイケル・ジャクソンの死を伝える新聞。
イラクリオンの街で、まずカメラ屋を探す。探し当てた二件目で、僕のカメラ「ニコンD四〇」の標準レンズを発見。中古とのことで百五十ユーロ。ためらいなく購入する。カメラに装着し、シャッターを切って、写真が撮れたときには正直ホッとした。
まだ時間があるので、「特急」でイラクリオンの街中を観光することにする。ヴェネチア人の作った港、教会、噴水などを見る。土産物屋で売られているドイツ語の新聞で、マイケル・ジャクソン死去のニュースを知る。
「それで、数日前からマイケル・ジャクソンの曲がラジオでよくかかってたんだ。」
と、納得する。ワタルが店先に置いてある新聞を「立ち読み」している。死因は心臓麻痺とのこと。
正午にイラクリオンの旧市街を出て、郊外のクノッソスに向かう。駐車場から車を出している間、マユミと子供たちは、ギリシア風「揚げ饅頭」を買ってきた。饅頭が、オリーブ油で揚げられた後、ハチミツがかかっている。饅頭自身はあっさりしている。結構美味しいが、食べるとオリーブ油とハチミツで、手がベタベタになり、運転しながら食べるには、まったくもって不適当極まる食べ物だった。ケンタッキー・フライドチキンも運転しながら食べると手がズルズルになって、運転を誤り易いが、それ以上かな。
クノッソスに到着。ひとり六ユーロを払って中に入る。一辺二百メートルはあるかと思われる、広大な遺跡だ。この宮殿、クレタ島で最初のミノア文明の遺跡で、今から三千七百年前に建てられたものだという。ミノア文明はこのような大きな宮殿を建てられるほど、優れたものだったが、紀元前一四〇〇年に、建物は崩壊し、文明は姿を消している。その原因は、他民族の侵入とも、火山の噴火ともいわれている。
ギリシア神話によると、
「ミノス王とその妻は、ポセイドンの怒りに触れ、雄牛と交わることになり、ミノタウロスという『牛頭人身』の怪物を産む。成長するにつれ、凶暴になっていったその怪物を、ミノス王は迷宮『ラビュリントス』に閉じ込める。ミノス王は、ミノタウロスのために九年に一度、アテネから七人の少年と七人の少女を生贄として贈らせる。その生贄の少年のひとり、テセウスは、ミノス王の娘アリアドネと恋に落ち、彼女の助けを得て、ミノタウロスを倒す。そして、脱出不可能といわれた迷宮から、アリアドネに教わったあるトリックを使って無事抜け出す。そのトリックとは、行くときに糸玉から糸を垂らし、帰りはそれを辿っていくというものであった・・・」
「そんなんあり?誰でも考え付くドリックやん。」
とスミレは言う。確かにそうだ。
ともかく、このストーリーは、長い間、単なる神話、作り話だと思われていた。しかし、一九〇〇年、英国人のアーサー・エヴァンスが、クノッソスの地にミノア文明時代の大規模な宮殿跡を発見。そこで神話と歴史が結びついたということだ。
クノッソス宮殿。結構迷路みたいで、よく考えないと目的地に着けない。