そんなんアリカンテ
太陽の下でくつろぐポヨ子。彼女はこの後吐いた。
今回、スペインの太陽の下にいると、身体がホコホコと温まるだけではなく、心の凝りがほぐれていくような気がした。
デッキチェアの上に日光浴をしていたが、正午を過ぎると、さすがに少し暑く感じるようになった。それで海に入ってみる。せっかく来たのだから、一回くらいは泳がないと。水温は二十度くらいか。入るのに少し勇気がいるが、入ってしまうとそれほど寒さは感じない。水の中で目を開くと、辺りは翡翠色である。百五十メートルくらい沖合に黄色いブイが浮いている。それを目標に泳ぐ。クロールで泳ぎ、それでは前が見えないので、時々平泳ぎを混ぜて軌道修正しながらブイに到着。折り返し、岸に戻る。また本を読みながら日光浴をして、暑くなったらブイまで泳ぐ。それを三回繰り返した。
妻が、ビーチボールのセットを買ってきた。「ラバーの張っていない卓球のラケットの姉さん」みたいな板で、スーパーボールみたいなゴムボールを打ち返す。早速妻とふたりでやってみる。結構難しい。このビーチボールは、砂の城を作ることと並んで、ヨーロッパの砂浜では最もポピュラーな遊び。ビーチバレーボールもオリンピック種目になったことだし、数年後にはこのビーチボールもオリンピックに登場するかもしれない。
昼過ぎにアパートに戻り、シャワーを浴び、出発までの時間を休息する。ポヨ子さんは朝から胃の調子が悪く、吐き気がすると言う。そう言えば、ここ二、三日、寝てばっかりで余り元気がなかった。きっと風邪が腹についたのだろう。
出発まで少し眠る。そうしておかないと後が辛いからだ。七時半にアリカンテを出発し、ガトウィックに到着するのが十時半。それから荷物を取って、一時間余り電車に乗らなければならない。おそらく帰宅は真夜中を過ぎるだろう。そして、翌日はいつものように五時半に起きて出勤だ。本当は、もう少し早い便でロンドンへ戻って、休息したかったのだが。最初、アリカンテから帰りが深夜になることを妻から聞いたとき、
「次の日仕事やのに、そんなんアリカンテ。」
と叫んでしまった。
午後四時、荷物を車に積んで、カルベを出発する。出発の直前、ポヨ子は駐車場で食べた物を戻していた。車に乗ってから吐くよりは、最初に胃を空にしてしまった方が、本人も道中楽だろう。しかし車の中、飛行機を待っている間、飛行機の中、電車の中で、ポヨ子はずっと機嫌が悪く、荒れまくっていた。しんどいのだから仕方がないと言うものだ。
空港で、五日間お世話になったレンタカー、「ルノー・シーニック」を返す。チェックインを済ませた後、もう運転がないので、妻と娘と別れ、パブへ行きビールを注文する。スペインのビール「サンミゲル」だ。このビール、スペインという、一見「ビール不毛の地」で作られているわりには結構いける。シンガポールの「タイガービール」、インドの「コブラビール」などと同じ感覚。期待してないところで飲むので、余計に美味しく感じるのかもしれない。