酒の味はメンバーで決まる
京都から市電は姿を消したが、嵐山行きの「嵐電」はまだ一部路面を走っている。西大路三条にて。
三月二十六日。水曜日。朝の散歩の途中、鞍馬口通りのうどん屋の前を通る。もちろんその時間に店はやっていない。ちょうどダシを取っているところなのであろう。カツオと昆布の何とも言われぬ良い香りが道に漂っていた。
朝食を終えると、イズミとサクラの両方から電話があった。その日の夜、一緒に飲もうという話。午後六時にサクラの家に集合ということであったが、二時間ほど前に行って、またピアノの練習をさせてもらうことにする。というとは夕方まで予定がない。父に頼まれていた簾を二階の窓の前に吊るす。昼前にプールへ行き泳ぐ。午後は二階の日当たりのいい部屋で昼寝をした。
午後三時に起きだして、バスで西院のサクラの家へ向かう。娘のマヤがいた。リヴィングで勉強をしていた彼女を自室に追いやって(ごめん、でもホンキートンクを聞いているより良いでしょ)、二時間ほどピアノを弾く。
間もなくサクラ姉さんが戻り、五時半にイズミの下の娘さんのツキが現れる。六時にイズミが真ん中の娘さんのユメを連れて到着した。イズミは昨年会ったときよりやせたようだ。
子供たちには家で食事をしてもらって、大人三人で、西大路通りを渡った向かい側の串かつの店へ行く。昔カナダのオタワに住んでいたというご夫婦がやっているカウンターだけの小さな店。サクラの家からの距離を考えても、彼女の行きつけの店であることは間違いない。
イズミは看護学校で教えていたが、その教え子の看護婦さんもひとり招待してあって、少し遅れて到着した彼女、クニちゃんも含めて、四人で飲み始めた。もう一組、男女の客がいたが、男性はサクラの知り合いのお医者さんとのこと。一緒の女性は看護婦さんらしいが、医師と看護婦以上の関係は分からない。
今日は、三月に社会人で大学院に合格したイズミのお祝いでもある。「おまかせ十本セット」の串かつが、次々と出てくる。時々チェリートマトの串かつなどという、意外なネタも混ざってくる。イズミは残念だが体調のせいで酒が飲めない。サクラと僕は快調に飛ばす。ビールから焼酎に移行。彼女はブッカキ氷と、僕はお湯割りで杯を重ねていく。
そのうち、同席の医師が阪神タイガースの熱狂的なファンであることが判明。「トラキチに国境はない。」と言うことでまた盛り上がる。今回はイズミと合格祝いでしみじみと飲むことを思い描いてロンドンを発ったのであるが、実際は、店を挙げてのお祭り騒ぎになってしまった。
実際楽しい酒だった。酒の味はメンバーで決まると思う。そういった意味では、最高のメンバーだった。三時間ほど、笑い続けて、騒ぎ続けて、十一時頃に外に出た。サクラに
「泊まっていけば。」
と言われるが、まさかそうもいかず。名残り惜しいが、タクシーで家に戻る。
この夜飲んだメンバー。色紙はイヅミとサクラのお父さんの筆によるもの。