事務局パンク寸前

 

噴水に飛び込んだ応援団長(撮影:田中玲子)

 

 九月に入り、賛同者の数が飛躍的に増え始めた。朝夕、自宅のEメールを開くと、毎回五人くらいの方から賛同や、問い合わせのメールが届いていた。その方たちに、会の趣旨を説明し、当日の段取りを連絡し、今後の連絡のために、その方たちの連絡先をメーリンググループに登録しなければならない。出社前や帰宅後、僕はその作業に忙殺された。

 そんなとき、ひとつ、悪い知らせも入った。最初からずっと一緒に活動して、当日の応援団長をお願いしていた門田さんの転勤が決まったのだ。また、この会のことが彼の会社に知られてしまい、会社から、表立った活動を禁止されてしまったそうだ。門田さんの代役で、岡野さんに急遽応援団長をお願いすることになった。もし、僕が日本からの駐在員だったならば、その前の「新聞に会社の名前が出てしまった事件」で、会社から同じような処分を食らっていただろう。幸い、僕が現地採用で、こちらの契約書にしか縛られない立場なので、お目こぼしになっただけなのだ。

 賛同者が五十名を超えた九月の第二週からは、別の心配が始まった。これまでは、人数が少なすぎる悩みだったが、今回は人数が多すぎる悩みだ。

当日、七時にトラファルガー・スクエアに集合して、七時半から「六甲おろし」を歌った後、皆でパブに繰り出して、乾杯をして、大いに飲む予定にしていた。その会場も、長井さんの紹介で、心づもりはしていた。(とは言っても、日が確定しないので、前もって予約ができないのが難点ではあるが)人数が増えるのは嬉しい。しかし、五十人以上の人間が一度に入れるパブがあるだろうか。また、仮にあったとしても、五十人が一斉に飲み物を注文したら、最後の人が飲み物にありつくには三十分くらい時間がかかるのではないか、そんな心配が生まれた。

 また、マジックがいよいよ二になった九月十一日には新たな心配事が。仮に優勝決定が十三日か十四日の週末になった場合、開いているパブが限られてくるのだ。あてにしていたパブも週末はお休みである。まあ、そのときは、早めに行って、開いていて、広くて、空いていそうなパブを探すしかない。

 忙しいようで、暇なような、変な毎日だった。「Xデー」はいつになるか分からない。しかし、その日には少なくとも僕はトラファルガー・スクエアにいなくてはいけない。だから、予定が立てられないのだ。従って、その前後数週間は、夕方に全然予定を入れていなかった。だから、夜や週末などは、結構暇なのだ。

 優勝決定の可能性が極めて高いと思われた、九月十三日と十四日の土日も、そんな理由で、何も予定が入ってなかった。しかし、阪神タイガースはその二日間連敗し、結局、週末に優勝は決まらなかった。

 僕は、外出もできず、仕方なく、庭仕事を始めた。芝を刈った後、二日間かかかって庭の木の枝切りをした。庭がずいぶん明るくなった。庭がきれいになった。これも、タイガース優勝の効用なのだ。