ポヨ子さんの手記、別れの日

 

学校の先生のひとりが記念にTシャツをくれた。

 

その夜は「特別の」夜だった。まず「スペシャル・ディナー」。定番の米、サツマイモの他に何と鶏肉が出てきた。この村で「肉」を食べたのは初めて、「肉」はよっぽどのことのない限り出て来ない「超」ご馳走なのだ。そして、発電機が回され、家に電灯が点いたのだ。それはランプの灯りに慣れたわたしに、眩しいほどの光だった。

マッケンジー一家だけではなく、レスター、リントン、グレン、ケヴィン、ステーシー・・・親戚の人たちも皆晩御飯に招待された。食事の後、若いメンバーは皆バルコニーに座った。久々の明るい電灯に照らされながら、床に就く時間まで、わたしたちは時々会話を交わし、またかなり長い時間、黙って過ごした。しかし、黙っている時間にも、心の交流が感じられ、良い時間だった。

わたしは別れが嫌いだ。でもその日は否応なしにやって来る。わたしはその朝を迎えた。誰に会っても、誰と話をしても、この人とはもうしばらく、いや、ひょっとしたらもう二度と会えないかと思ってしまい、わたしの心は常に落ち着かない。

しかし、いつもと変わらない日課が進行していく。朝食の後、わたしはフォーム一と二のクラスの生徒たちに最後の授業をするために、学校に向かった。一時間目の授業が終わり最初の休み時間になったとき、先生方がわたしにお別れのプレゼントを渡すために、わたしの教えていた教室に集まった。プレゼントの貝でできたネックレスをもらった後、わたしは謝辞を表す短いスピーチをした。

その後の職員会議が長引いてしまい、それが終わって、わたしの教えていたクラスにあわてて駆けつけたとき、授業は終り、大部分の生徒は帰った後だった。わたしは残っていた生徒たちに「さよなら」を言い、荷造りのために急いで村に戻る。

昼過ぎに、ホニアラに向かうトラックに乗るために、ベラハに向かう。わたしは村と、わたしの住んだ家と、わたしの眠った部屋を見回した。一番下の息子トシと、お父さんのトーマスに別れを告げる。トーマスは時々町に来るので、もう一回ぐらいは会えるかも知れない。そして、わたしは村を後にし、歩き出した。トシとトーマス以外のホストファミリーと、グレン、リントン、レスター、カイリーとトカが、わたしの見送りにベラハまで付いてきてくれた。リツコさんも一緒だ。

ベラハまでの道中は、いつもと一緒、楽しい会話をしながらもものだった。お母さんのメアリーは、わたしの重いリュックサックを持つと言って聞かない。結局、メアリーは道のりの四分の三以上、わたしのリュックを担いでくれた。子供たちは、ときどきジャングルの中に消えたかと思うと、わたしがち道中飲むためのココナッツの実を採ってきては、わたしたちに渡してくれる。二十分ほどで、ココナッツの数は全部で十五六個になった。皆が、器用に歯を使って、ココナッツの周りの繊維をむしりとり、上に穴を開けている。わたしたちは、ベラハに着くまで、歩きながらその白い濃厚なジュースを飲み、穿り出した果肉を食べた。

 

庭でくつろぐトーマスと息子たち。

 

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