真夏のアイスホッケー
真剣にパックを奪い合う少年たち
Y子さんと同僚のTさんと三人で、サンタモニカで食事をして、Y子さんの家に戻ったのは午前一時だった。翌朝、僕が九時ごろ起きてジョギングにいくとき、美容院の予約があると言っていたY子さんはもう家にいなかった。Y子さんは前日も朝六時に家を出て仕事に行ったのに。よく頑張る人である。でも、野球から帰ってから、Y子さんはお風呂に入っているうちに、バスタブの中で眠ってしまったそうである。
その日、つまり土曜日の午後、地元に住むTさんの案内で、Y子さんと娘さんと僕はヴェニスビーチという海岸に行った。そのとき、Y子さんがお風呂で寝てしまったと言う話題が出た。Tさんは
「Y子さんはお風呂に入るとき、溺れないように、両腕に浮輪をつけて入らないと。」
とコメントした。サンタモニカには、海岸にお洒落な店が並んでいるのに対して、ヴェニスビーチは少し猥雑な感じの土産物屋が並んでいる。売っているものは、およそなくても暮らしていけるものばかり。僕はロンドンの蚤の市を思い出した。
二時間ほど海岸を散歩した後、Tさんと別れて、Y子さんの息子さんのアイスホッケー少年チームの試合を見にいった。真夏にアイスホッケー、何だがピンと来ないが、ロサンゼルスは一年中夏みたいなものなので、気候に関係なくアイスホッケーをやらないと、やる時がないのである。
スケートセンターは、街中とY子さんの住むトーランスのちょうど中間あたりあった。フィギュアスケートのミッシェル・クアン選手や、プロのアイスホッケーチームも練習しているという、有名なクラブらしい。中には、インライン用のリンクが一面と、スタンドのついたアイスリンクが二面あった。
息子さんの送り迎えは、Y子さんのご主人がやられているのだが、何せ、防具と言うかプロテクターがかさばるので、荷物が大きくて大変である。車じゃないととても運べない。汗をかくのにあまり洗濯できないので、臭くてたまらないとY子さんがこぼしていた。
子供たちがリンクに出てきたので、スタンドに下りる。さすがに氷の近くはひんやりとしていて、持ってきたジャンパーを着る。しかし、応援のお父さんお母さんの中にはTシャツとショーツの人もいる。アメリカ人は寒さに強いのかも。
アイスホッケーの試合を見るのは初めて。子供たちの力でも、パックが壁に当たると、ドーンと腹に響く音がする。慣れないうちはビクッとしてしまう。Y子さんの十一歳の息子さんのチームは紫色のユニフォーム。ヘルメットをかぶっているので、お父さんに息子さんの背番号を教えてもらうまで、どれが彼か分からなかった。
試合が始まる。結構本格的、様になっている。面白かったのは、パスの出し方。アイスホッケーは壁の中のスポーツである。サッカーに「壁パス」というのがあるが、壁を使ってパスをしたり、湾曲した壁を使ってパックを前に出したり、壁を上手く使っての戦術が作られているというのが感想。是非一度プロの試合も見てみたい。