怠惰な旅行者にとって図書館とは

LA市庁舎前の姉妹都市とその方角、距離を示す立て札。名古屋も見える。

 

 「ドッジボール」の映画を堪能した後、「ホワイト・チックス」と言う映画を見たというY子さんの娘さんとボーフレンド、ダスティン君と落ち合い、スーパーで買い物をしてY子さんのお宅へ戻った。

夕食に僕が鶏の照り焼きを作った。純粋のアメリカ人、ダスティン君が照り焼きなんて食べるかなとちょっと心配したが、「非常に美味しい」と食べてくれたのでひと安心。そう言えば「テリヤキ」って、アメリカのレストランにもあって、もう英語になっている。

ダスティン君が泊まっていくので、ベッドが足りなくなり、その夜は、近くに住む友人テニスコーチのUさんの家に泊めてもらった。Uさんは、サーフィンの好きなスペイン人のお兄ちゃんである。

 翌朝、Uさんとまた海岸をジョギング。テニスのコーチだけあり、彼もなかなか速い。三十分ほど走ったとき、Uさんは途中でウOコがしたくなり、トイレに行った。そう言えばUさんは、一年前一緒に走った時も、途中でトイレに行ったっけ。面白い人である。

 その日、金曜日は皆さん仕事に出かけたので、僕は電車でロサンゼルスのダウンタウンに出た。夕方、Y子さんと彼女の会社の同僚とで、ドジャースの試合を見ることになっている。ダウンタウンに着いたのは昼前で、Y子さんと会う夕方の五時半までには、まだまだ時間があった。

 僕は観光が大の苦手である。旅行が好きなのに、観光が苦手というのは矛盾している。しかし、観光地で、いろいろ見ようと思っても、すぐに「もうええわ」と言う気分になってしまう。自分でも、怠惰な旅行者であると思う。この点は、Y子さんからも指摘されており、前回来たときも、「あなた、わざわざアメリカに、走るためと、酒を飲むために来たの?」と言われてしまった。

 その日もそうであった。リトルトーキョーの日本レストランで飯を食った後、ウォールド・ディズニー・コンサートホールをちょっと見て、現代美術館を見て、まだ三時前なのに「もうええわ」と言う気分に取り付かれてしまった。天気は良く、ガラス張りの高層ビルが青空に聳え立っている。でも、それらのビルが余りにも至近距離にあるので、何度も見ていると首が痛くなってきた。それに、ロンドンが夜の時間に入り、なんとなく、眠くなってきた。

 こういうとき、怠惰の旅行者にとって、まことに都合の良い場所は図書館である。僕は、おそらくこういうことになるだろうと予測して、場所を調べておいた、「ロサンゼルス中央図書館」に入っていった。図書館はY子さんのオフィスの向かい側にあるので、その点も好都合である。図書館に入り、別にどこでも良いのだが、「海外文学」の部屋に行く。ソファに座り、持ってきた本を開く。静かだし、エアコンも効いている、読書には持ってこいの環境である。しかし、三ページも読む前に僕は眠ってしまった。結局、僕は一時間半ほど、ぐっすりと眠り、五時半にY子さんのオフィスへと向かった。