平日の昼の野球場見物とは
試合開始。阪神の先発は太陽、オリックスはケビンと言うアメリカ人。共通点は、ファーストネームを登録名にしていることか。
平日の昼と言うことで、観客は少ない。五万五千人収容できるスタジアムに、観客はせいぜい五千人くらいか。しかも、そのうち四千五百人が三塁側に座っているのだ。オリックスの陣取る一塁側のスタンドは、殆ど空席。可哀想なくらい。オリックスも一応地元のチームなのだが。イマイチ存在感の薄いのだ。オリックスのベンチの後ろに、やたら声の良く通るお姉ちゃんが座っていた。「タ・ニーィ」、「キ・タ・ガ・ワー」、そんな彼女の叫び声が、しんとしたスタンドに響き渡る。「アイスクリームはいかがですかあー」「ビールはいかがですかー」と言う声もやたらと耳に付く。
金本選手がいないだけで、ほぼベストメンバーの阪神だったが、その日は良い所なし。相手のピッチャーに完璧に抑えられ、たまに出塁しても盗塁失敗とか併殺打。先発投手は二本のツーランホームランを浴びていた。それ以外は、余り盛り上がらず、試合は淡々と進んでいく。
僕は、球場の中を少し歩いてみることにした。幸い、内野は自由席なので、動き回ることができるのだ。二階席に上がってみる。そして、二階席が結構見やすいのに感心した。高い所から、球場全体が見渡せるのだ。グラウンドで何が起こっているのかを、満遍なく知るには、ここが一番のような気がする。もちろん、遠すぎるので、選手の表情なんかは見ることができない。しかし、投手の球筋なんかも、横から見るよりは、上からみるほうが良く分かる。昔、エポック社の野球盤というゲームがあったが、二階席から見下ろすグラウンドは、その野球盤を眺めているような印象だった。
結局、阪神は四対ゼロでオリックスに抑えられてしまった。しかし、所詮オープン戦なのだ。僕は「ナマ」でタイガースの選手を見られたことに満足して大阪ドームを出た。外は相変わらずの雨だった。
大正駅からまた環状線に乗る。各列車には一輌、ピンクのステッカーを貼った女性専用車がある。それだけ混雑が激しく、痴漢が多いのだと変な感心をする。
京都駅で降りて、地下鉄を待っているとき、隣に落ち着いたベージュ色の振袖を着た若い女性が座っていた。僕にとっては珍しいので、ついつい観察してしまう。着物って、結構上半身にぴったり張り付いた感じで、身体の線が見えて、艶かしいものだとその時思った。僕はどうもフォーマルな格好をした女性にセックスアピールを感じるらしい。ともかく、こうして見ているだけなら害はないのだろうけど、ここで行動してしまう男性がいるので、女性専用車なるものができてしまうのだろう。
実家に戻ると午後五時。夕食までにはまだ時間があるので、銭湯に出かけた。銭湯のサウナで、オーストラリアやアメリカから来たお兄ちゃんたちと英語で話をした。銭湯から外に出ると、ようやく雨が上がっていた。