若い人たち

 

 二日め、Mさんが朝七時にホテルへ迎えに来てくれた。儀式は既に朝五時から始まっているのだが、長旅で疲れているであろう私を慮って少し遅く来てくれた。今日も快晴。暑くなりそうである。

 式場に着くと、新郎新婦は二人でブランコの上に座っていた。建物の前にブランコが置いてあり、これは明日使うんだよと昨日だれかが言っていたのを思い出した。家族、親戚の女性だけが集まっており、新郎新婦の足を牛乳で洗っている。Mさんによると、これは女性たちによる新婦を迎え入れる儀式なのだそうだ。その後、ひとりづつ米の団子を、四方に放り投げていた。全く色々なことをするものだ。新婦は小柄で、クリクリした眼をした可愛い女性である。私の二番目の娘に雰囲気が似ていると思った。

 Mさんとふたりで食堂へ向かい朝食を取る。朝食は米の飯の代わりに米の粉で作った団子、ドサというパンケーキ。サンバというカレースープに浸して食べる。もちろんバナナの葉から。「ホテルで朝飯を食べなくてよかったよ。」私はMさんにそう言った。

 舞台の上では儀式が佳境を迎えていた。K側の家長である八十歳はとうに越えていると思われるKの祖父が舞台に上がり、花嫁の父が何か贈り物を渡す儀式であった。その日のクライマックスはKが新婦に紐の首に紐で出来た飾りを結びつける瞬間。指輪の交換にあたり、これをもって、ふたりは正式の夫婦になるとのことである。舞台では常に火が焚かれており、新郎新婦は頻繁に汗を拭っている。その後、招待客が次々舞台に上がり、プレゼントを手渡し、祝福をする。ただ、その頃には午前十一時を過ぎ、気温がまた四十度に近づいてきたらしく、頭がボンヤリしてきた。私は早めに昼食をとり、ホテルに戻った。

その日、夕方からまた儀式に参加したが、それは面白かった。場所を舞台からホールに移して、新郎新婦がそこで向かい合ってゲームをするのである。まず、新婦がいろいろな動作をする、新郎に足に模様を描いたり、歌ったり。その後それと全く同じことを新郎が真似をする。また、ココナッツの実を新郎が片手で握る、それを新婦が指をこじ開けて取ろうとする。新婦が両手で握ったココナッツを新郎がその後片手で取る。たわいもないゲームであるが、観衆は沸きに沸いていた。

夜八時ごろにその日の全ての予定が終了。Kも新婦もほっとした表情である。翌日も儀式は続くのであるが、私はその日の夜行列車でチェンナイに戻ることにする。列車が駅を出るのは十時半。二時間ほどの間、ティーンエイジャーの四人と色々話をした。ゴグル君は、食事のとき後ろで私の後ろで食べ物の説明を絶え間なくして、最後はMさんにうるさいと追い払われていた。プルニマはお手伝いの好きな役に立つ女の子である。サンバーヴィは最初にバラの水を振り掛けてくれた細身の少女。ラクシミはゴグルの姉で明るい美しさ。皆素朴で、好奇心に満ちていて、気持ちもいい少年少女だった。驚いたことに、皆メールアドレスを持っていた。この生活環境とインターネット。その格差に驚く。私はロンドンから彼らにメールを送ることを約束した。