ダイエットは難しい
これから小さな飛行機に乗って英国に向かう。男の子も楽しそう。
翌日、八月五日。何故か四時ごろに目が覚め、その後眠れない。まあ、五時間眠ったしまあいいかと思い、辺りが明るくなるのを待って、昨日に引き続き森の中に散歩に出かける。今日も昨日に引き続き、良い天気、温かい日になりそうな予感がする。
昨日で、メインの「説明」と「教育」は終わってしまった。その日は殆ど一日オフィスで仕事をする。昼前、カロラが「ダイエット食」と称して、サラダを食べている。十二時なって、クリスティアンと僕が、向かいの郵便局の集配所の食堂へ昼食に行こうとすると、カロラも付いてきた。
「えっ、お昼ご飯、もう食べたんじゃなかったの。」
と聞くと、
「少しだけ付き合うわ。」
とのこと。彼女は、「カリフラワーポタージュスープ」を大きな皿で注文。クリームのたっぷり入ってなかなか濃厚そうなスープだ。オフィスに帰ると、クリスティアンが
「アイスクリーム売りの車が門の前に来てるけど。誰か食べる?」
と聞く。カロラが真っ先に手をあげた。
「カロラ、昼飯を二回食べて、その後アイスクリーム。それでダイエットはないやろ。」
と言いかけるが口には出さないでおく。
五時前にまたナルセさんにデュッセルドルフ空港まで送ってもらう。オフィスを出る前に情報システム部のメンバーと握手。
「また近いうちにおいで。」
と皆言ってくれる。階下のミヒャエルは別れ際にも、こちらの手が握りつぶされるのではないかと思うくらいの握手をした。空港でナルセさんの車を降りるときに、
「お世話になりました。」
というと、
「別に、何にもお世話してないんですけど。」
と言われた。
「いえ、その方が嬉しいんですよ。『放し飼いのモト』って呼ばれてますから。」
そう言っておく。空港でまだ時間があったので、娘のミドリに手紙を書く。
「ミンキーと同じ三本足のネコを見たよ。」
もちろんそのことも書き添える。
チェックインを済ませ、搭乗口に入る前、「SUSHI KIKAKU」という看板が目に入った。新しい寿司バーができたらしい。別にわざわざデュッセルドルフまで来て、寿司を食う必要もないのだが、何となくカウンターに座り、冷酒とアナゴ巻きを注文してしまう。昼飯にパスタを食べてまだ腹も減ってないんだけど。カロラのことを偉そうに言えない。
七時になり、僕はまた例の、小さなプロペラ機に乗り込んだ。
あまりお目にかかれない、飛行機の車輪が格納される様子。翼が上にあるから見えた。