ケンブリッジ大学に入るには

 

奇妙な形の橋と、その下を行く「パント」。

 

 僕たちは、川沿いのパブ「ザ・アンカー」に入った。パブは橋の袂にある。車の通れる石の橋の横に、真っ直ぐな木を組み合わせた、奇妙な橋が架かっていた。Y君によると、この橋は有名で、これに関して色々な言い伝えがあるらしい。反対側は、ボート乗り場で、「パント」が多数係留されていた。

 日曜日の午後と言うことで、パブは混んでいた。未成年のポヨ子と、これからダンスの練習があるY君にはオレンジジュースを頼み、僕たち夫婦はビールを注文する。今日は、Y君とポヨ子が並んで歩いて、ずっと話をしていた。パブの中でも、ポヨ子は、大学受験や、合格した後の生活について、Y君に色々質問している。

 ここで、簡単に、ケンブリッジ大学に入るまでの過程を説明しておこう。別にケンブリッジだけではなく、英国の大学では共通の方法だが。

まず、義務教育を終え大学を目指す者は、二年間の「大学進学予備課程」(Sixth Form)に進む。この過程は高校の中に併設されているものもあるし、独立しているものもある。その二年間の間に、日本の「センター試験」に当たる「Aレベル」、あるいはより国際的な「インターナショナル・バカロレア」の試験を受ける。「Aレベル」だと、普通たった三教科でよい。しかし喜ぶのは早すぎる。各教科とも、筆記試験、口頭試験、実技試験と多彩で、ほぼ半年かかりの受験なのだ。ポヨ子は音楽を取っているが、最低ふたつの楽器の演奏、作曲、編曲、それに筆記、口頭試験などあがり、結構大変そうだ。

大学進学の一年前に、志望者は大学に対して「願書」を出す。その中「どうして私はおたくの大学で勉強したいか」ということを切々と訴えるのだ。大学はそれを読み、好みの学生と面接をする。その面接で「内定」を貰える子もいれば、蹴られる子もいる。

しかし、その「内定」の時点では、まだ「センター試験」が終わっていない。そこで、大学は「もしあなたが試験で何点以上だったら」という条件をつける。「内定」をもらった志願者が、その点数をクリアしたら、めでたく「入学」ということになる。

 最近、「センター入試、Aレベル」が簡単になりすぎ、最高得点を取るものが余りにも多いことが問題になっている。各教科、A、B、C、Dの評価が決まるのだが、ポヨ子の行っているような進学校になると、生徒の半分以上が受験した三教科とも最高の「A」。それ以上はないのだから、大学としても、それを使って選択しようがない。

 そこで、大学は学生選択のために「面接」を重視するようになる。しかし、そこにも問題が出てくる。入学試験で一番大事なことは「公正さ」だと思う。しかし、面接だと、どうしても、私情、先入観が入る余地がある。ポヨ子の同級生の一人は、オックスフォード大学の政治学部を志望しているが、学部の説明会に行ってみると(有料でえらく高い)、一部の有名私立高校は、既に大学とパイプができていて、そこの生徒は既に大学の教授と顔なじみだと言う。これでは、「公正」な面接、決断は望めない。

いずれにせよ、英国では、受験生が自分を売り込まない限り、有名大学には入れないのだ。

 

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